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◇第128回土曜セミナー 〈力道山生誕100周年記念〉

「力道山という生き方」

力道山とは、何者だったのか。今回の講演では、昭和の大スターだった力道山のライフヒストリーを、格闘家と出自という二つの視点から振り返る。格闘家という視点からは、力道山の人生は、1)シルムの時代、2)大相撲の時代、3)プロレスラーの時代という3つの時代にわけて考察することができるが、今回の講演では、とくにこれまで振り返られることが少なかった力道山のシルム・大相撲時代の活躍について、また出自という視点からは、それぞれの時代における力道山の国籍とアイデンティティの葛藤について、それぞれ考察してみたい。

  • 日 時
  • 2024年 11月 16日(土)
  • 講 師
  • 朴 一(大阪市立大学名誉教授)
    1956年兵庫県生まれの在日韓国人3世。1980年、同志社大学卒業、1988年、同大学大学院博士課程修了(商学博士)、立正大学専任講師を経て、1990年10月から2023年3月まで大阪市立大学経済学部に専任講師、助教授、教授、大学院教授として勤務。現在、大阪市立大学名誉教授、大阪大学大学院公共政策研究科招聘教授、摂南大学国際学部客員教授。著書に『在日という生き方』、『在日コリアンってなんでんねん』、『僕たちのヒーローはみんな在日だった』、『日本と韓国のホンネとタテマエ』、『在日マネー戦争』(すべて講談社)などがある。
  • 参加費
  • 1,000円(会員800円、学生500円)

◇第129回土曜セミナー

「戦後日本の知識人と「朝鮮」植民地問題-南原繁・矢内原忠雄を素材に」

外国人地方選挙権が韓国で実現したのは2005年。日本で「永住外国人地方選挙権付与法案」国会提出は1998年も、今だ実現せず。この違いは何処から?韓健洙教授「日本の植民地支配に抵抗する過程で形成されてしまった単一民族論と純血主義は克服されるべきである。…新しく再編される韓国社会または韓国人が民族と文化の多様性を通して新しい歴史を創って行くべきである…」。植民地支配のもう一方の日本では?と設問するも、なかなか答えが見えない…。

  • 日 時
  • 2024年 12月 14日(土)
  • 講 師
  • 田中 宏(一橋大学名誉教授)
    1937年生まれ、岡山出身。アジア学生文化協会勤務、愛知県立大学教授、一橋大学教授、龍谷大学特任教授を経て現在、一橋大学名誉教授。専門は日本アジア関係史、ポスト植民地問題、在日外国人問題、日本の戦後補償問題。著書に『日本のなかのアジア-留学生・在日朝鮮人・「難民」』(大和書房、1980年)、『虚妄の国際国家・日本』(風媒社、1990年)、『戦後60年を考える-戦後裁判・国籍差別・歴史認識』(創史社、2005年)、『在日外国人-法の壁、心の溝』(岩波書店、1991年/新版、1995年/第三版、2013年)、『「共生」を求めて-在日とともに歩んだ半世紀」』(中村一成編、解放出版社、2019年)、共著に『グロ-バル時代の日本社会と国籍』(明石書店、2007年)、『戦後責任』(岩波書店、2014年)など多数。
  • 参加費
  • 1,000円(会員800円、学生500円)

*事前の申し込みが必要です。
当館事務局まで電話・メールのいずれかでご連絡ください。

TEL : 03-3457-1088   MAIL : [email protected]

今までの開催リスト

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  • セミナー
  • 日付
  • 講師
  • テーマ
  • 第1回
  • 2006/3/4
  • 姜 徳相(在日韓人歴史資料館館長)
  • 日本の近現代史をどう考えるべきか Ⅰ
講 師:姜徳相(在日韓人歴史資料館館長)
一橋大学教授を経て、現在、滋賀県立大学名誉教授。著書に『関東大震災』(中央公論社)、『朝鮮独立運動の群像』(青木書店)、『呂運亨評伝1:朝鮮三・一独立運動』(新幹社)、『呂運亨評伝2:上海臨時政府』(新幹社)、『錦絵の中の朝鮮と中国』(岩波書店)、編著に『現代史資料:朝鮮1~6』(みすず書房)など。
  • 第2回
  • 2006/4/1
  • 李 成市(早稲田大学教授)
  • 古代史からみた現代/現代からみた古代史
講 師:李成市(早稲田大学教授)
古代東アジアの国家形成、文化研究を核に、東アジアの地域文化研究を展開している。著書に『東アジア文化圏の形成』、『古代東アジアの民族と国家』、『東アジアの王権と交易』、『創られた古代』など多数。
  • 第3回
  • 2006/6/3
  • 姜 徳相(在日韓人歴史資料館館長)
  • 日本の近現代史をどう考えるべきか Ⅱ
    ~大日本帝国の生成・発展・滅亡~
講 師:姜徳相(在日韓人歴史資料館館長)
一橋大学教授を経て、現在、滋賀県立大学名誉教授。著書に『関東大震災』(中央公論社)、『朝鮮独立運動の群像』(青木書店)、『呂運亨評伝1:朝鮮三・一独立運動』(新幹社)、『呂運亨評伝2:上海臨時政府』(新幹社)、『錦絵の中の朝鮮と中国』(岩波書店)、編著に『現代史資料:朝鮮1~6』(みすず書房)など。
  • 第4回
  • 2006/7/1
  • 鄭 早苗(大谷大学教授)
  • 多文化共生社会への取り組み
講 師:鄭早苗(大谷大学教授)
大阪国際理解教育研究センター(KMJ)理事長。著書に『韓国・朝鮮を知るための55章』(共著・岩波書店)、『ともに生きる社会 : 在日コリアンの人権を考える』(共著・大阪国際理解教育研究センター)など。
  • 第5回
  • 2006/8/5
  • 姜 徳相(在日韓人歴史資料館館長)
  • 日本の近現代史をどう考えるべきか Ⅲ
    ~日本の敗戦とサンフランシスコ条約~
講 師:姜徳相(在日韓人歴史資料館館長)
一橋大学教授を経て、現在、滋賀県立大学名誉教授。著書に『関東大震災』(中央公論社)、『朝鮮独立運動の群像』(青木書店)、『呂運亨評伝1:朝鮮三・一独立運動』(新幹社)、『呂運亨評伝2:上海臨時政府』(新幹社)、『錦絵の中の朝鮮と中国』(岩波書店)、編著に『現代史資料:朝鮮1~6』(みすず書房)など。
  • 第6回
  • 2006/9/9
  • 朴 慶南(作家)
  • ホンモノの信頼関係を築く
講 師:朴慶南(作家)
各地の講演会で人間としての尊厳と命の大切さを楽しく伝え歩いている。著書に『ポッカリ月がでましたら』、『クミヨ!』、『私以上でもなく、私以下でもない私』など多数。
  • 第7回
  • 2006/10/7
  • 佐々木直子(韓国料理研究家)
  • 秋タ(추석)の食べ物と飲み物を味わおう!
  • 第8回
  • 2006/11/4
  • 李 節子(東京女子医科大学大学院看護学研究科助教授)
  • 在日コリアンの人口動態からみた健康課題
講 師:李節子(東京女子医科大学大学院看護学研究科助教授)
在日外国人の母子保健研究の第一人者。看護専門職への「国籍条項」を卒論にまとめて旧自治省を動かし、「壁」は全国的に撤廃された。1995年、東京大学で博士号を取得。日本国際保健医療学会理事。東京大学大学院国際保健学専攻発達医療学客員研究員。
  • 第9回
  • 2007/2/3
  • 呉 徳洙(映画監督)
  • 映画「在日」の上映と在日を語る
講 師:呉徳洙(映画監督、OH企画代表)
早稲田大学卒。1998年制作の映画『在日(戦後在日五〇年史』で98年度日本映画ペンクラブ1位入賞、98年度キネマ旬報ベストテン2位入賞。他に記録映画『指紋押捺拒否』、『祭祀』など。
  • 第10回
  • 2007/3/3
  • 金 順子(韓国舞踊家)
  • 在日として韓国舞踊を語る
講 師:金順子(舞踊家、金順子韓舞楽芸術団代表)
在日2世。10代より本格的に韓国伝統芸術に取り組み、本国の多くの人間文化財に師事。韓国無形文化財第92号太平舞保存会日本東京支部長、太平舞履修者。社団法人韓国国楽協会日本関東支部長。
  • 第11回
  • 2007/4/7
  • 朴 一(大阪市立大学大学院教授)
  • 戦後を駆け抜けた二人の在日コリアン
    ~新井将敬と孫正義~
今回のセミナーでは、政治家・新井将敬と企業家・孫正義という日本社会に大きな影響力を持った2人の個性的な人物に光をあてて、在日コリアン2世・3世がそれぞれどのような民族的葛藤を抱えながら、自己実現に向かって生きてきたかを彼らのライフヒストリーから検証してみます。

講 師:朴 一(大阪市立大学大学院教授)
1956年兵庫県尼崎市生まれ。商学博士。専攻は朝鮮半島の政治と経済、日韓・日朝関係論。著書に『在日という生き方』(講談社)、『「在日コリアン」ってなんでんねん』(講談社)、『朝鮮半島を見る眼』(藤原書店)など多数。
  • 第12回
  • 2007/6/2
  • 鄭 大聲(滋賀県立大学名誉教授)
  • キムチ博士が語る、韓国料理と健康
韓国料理は健康に良いとされています。長い生活の歩みの中から民族の知恵が生み出したものです。自然と社会の環境を巧みに利用した食生活の基本は「薬食同源」といわれる考えです。たとえばキムチは素晴らしい食事の副食です。消化促進、ダイエット効果、がん予防などの価値ある効果が確認されています。

講 師:鄭大聲(滋賀県立大学名誉教授。理学博士)
発酵食品、食の文化、朝鮮半島の食文化を専門分野として研究に取り組む。著書に『焼肉は好きですか?』(新潮選書)、『朝鮮半島の食と酒』(中公新書)、『ヘルシーキムチ』(祥伝社)など。
  • 第13回
  • 2007/7/7
  • 金 升子(国際医療福祉大学保健医療学部看護学科准教授)
  • 病気や老いと上手に付き合うために
誰にも、老いと病は確実にきます。朗(老)年最前線にいる方々、介護をしている方、これから受ける可能性のある介護予備軍の方…御自分の健康は、ある程度、自助努力で守りましょう。

講 師:金升子(国際医療福祉大学保健医療学部看護学科准教授)
国立栃木病院、日大医学部付属板橋病院で看護師、自治医療大学での看護婦(師)長、治験薬担当(CRC)を経て2002年から現職。
  • 第14回
  • 2007/8/4
  • 姜 徳相(在日韓人歴史資料館館長)
  • 錦絵から見た幕末「明治」の東アジア観
日本人の東アジア観はどのようにつくられたのか。尊皇討幕の国学思想=尊皇征韓になっていく過程を錦絵で解明します。司馬遼太郎史観を批判。

講 師:姜徳相(在日韓人歴史資料館館長)
一橋大学教授を経て、現在、滋賀県立大学名誉教授。著書に『関東大震災』(中央公論社)、『朝鮮独立運動の群像』(青木書店)、『呂運亨評伝1:朝鮮三・一独立運動』(新幹社)、『呂運亨評伝2:上海臨時政府』(新幹社)、『錦絵の中の朝鮮と中国』(岩波書店)、編著に『現代史資料:朝鮮1~6』(みすず書房)など。
  • 第15回
  • 2007/9/1
  • 内藤正中(島根大学名誉教授)
  • 竹島問題、解決の方途をさぐる
外務省のホームページで述べられている日本政府の竹島問題についての主張を批判的に検討する。私たちは、過去の歴史の事実に対して正面から向き合うことによってのみ、問題解決の方途をさぐることができる。

講 師:内藤正中(島根大学名誉教授)
著書に『島根県の百年』、『日本海地域の在日朝鮮人』、『竹島(鬱陵島)をめぐる日韓関係史』、『島根県下在日コリアンの歴史』など。
  • 第16回
  • 2007/10/6
  • 姜 徳相(在日韓人歴史資料館館長)
  • 関東大震災八十四年を迎えて
84年前、関東一帯で朝鮮人という理由だけで6000名以上の人が殺された。誰が、どこで、誰に殺されたのか。いまだに解らない。虐殺の舞台裏にいたとみられる当局もいまだに知らぬ存ぜぬである。今改めて真相を問う。歴史に学べ何度でも。

講 師:姜徳相(在日韓人歴史資料館館長)
一橋大学教授を経て、現在、滋賀県立大学名誉教授。著書に『関東大震災』(中央公論社)、『朝鮮独立運動の群像』(青木書店)、『呂運亨評伝1:朝鮮三・一独立運動』(新幹社)、『呂運亨評伝2:上海臨時政府』(新幹社)、『錦絵の中の朝鮮と中国』(岩波書店)、編著に『現代史資料:朝鮮1~6』(みすず書房)など。
  • 第17回
  • 2007/11/3
  • 俵 義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長)
  • 沖縄戦「集団自決」教科書検定と
    「つくる会」教科書の行方
日本政府や右派は、日本のアジア侵略戦争の加害事実を隠蔽し、皇軍の名誉を回復することが日本の名誉と誇りを守ことだと主張している。その主なターゲットが「慰安婦」、南京大虐殺、沖縄戦強制集団死である。一方、内紛によって分裂し、扶桑社と絶縁した「つくる会」の次の教科書はどうなるのか、を明らかにする。

講 師:俵義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長)
教育・教科書問題を中心に各誌に論文・評論・エッセイなどを掲載。『あぶない教科書NO!』(花伝社)など著書・共著書多数。各地で講演活動。
  • 第18回
  • 2007/12/1
  • 映画上映会
  • 在日朝鮮人「慰安婦」宋神道のたたかい
    「オレの心は負けてない」
宋神道が裁判をたたかった10年。それは、自らの被害を吐露し、社会化する過程だった。これをつぶさに見た支える会は、宋神道と共に泣き、笑い、歯ぎしりしながら、多くを学んだ。宋神道と支える会が紡いだ関係。それは、敗訴しても負けた気がしない、と互いに言い合える豊かな関係として実を結んだ。今、この映画を世に送る。
*上映後、「支える会」関係者を交え、質疑応答を予定。

【映画情報】
制作:在日の慰安婦裁判を支える会
監督:安海龍
撮影:梁澄子、安海龍、朴正植
編集:田中藍子
効果編集:金徳奎
音楽:張在孝、孫晟勲
ナレーション:渡辺美穂子
  • 第19回
  • 2008/2/2
  • 菊池和子(写真家)
  • カメラを通してみた在日一世の哀歓
在日一世が参加するトラヂの会(川崎市ふれあい館主催)に通って撮影するなかで、一世たちの哀歓が具体的に浮かび上がる。また、韓国での写真展をきっかけに、終戦前後に韓国へ帰った元在日たちのその後の人生を知る。そこから、庶民の人生と心に落とした拭い去ることのできぬ日本の責任を考えたい。

講 師:菊池和子(写真家)
1945年、中国生まれ。1968年から2020年まで東京都公立小学校教諭。1994年より現代写真研究所で写真を学ぶ。写真集『しんちゃん』(草土文化、2001年)、写真集『チマ・チョゴリの詩がきこえる』(小学館、2005年)、『釜山できく元在日の詩』(かもがわ出版、2007年)などを出版。
  • 第20回
  • 2008/3/4
  • 辛 淑玉(人材育成コンサルタント)
  • 生き抜いてきた在日
    ~多文化・多民族共生の課題~
在日と阪神大震災。在日指紋押捺の復活。在日とテロ対策などを通して、国際化に向けた日本の課題を整理し、現在の移住労働者や難民の問題をともに考えます。

講 師:辛淑玉(人材育成コンサルタント)
1995年(株)香料舎設立。企業、自治体、教育機関などの人材育成、人権に関わる研修・講演活動を行う。2006年はカリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員として1年間滞米、人権問題に取り組む。「痛快おんな組」(朝日ニュースター)にレギュラー出演中。著書に『悪あがきのすすめ』、『怒らない人』、『せっちゃんのごちそう』など。
  • 第21回
  • 2008/4/5
  • 李 成市(早稲田大学教授)
  • 壇君神話を通してみた朝鮮近・現代史
高句麗の始祖・朱蒙(チュモン)が注目されています。今なぜ朝鮮古代史なのか?高句麗始祖伝説とも深い関わりをもつ古朝鮮の建国神話・檀君神話を通して、朝鮮の近・現代史を考えます。

講 師:李成市(早稲田大学教授)
古代東アジアの国家形成、文化研究を核に、東アジアの地域文化研究を展開している。著書に『東アジア文化圏の形成』、『古代東アジアの民族と国家』、『東アジアの王権と交易』、『創られた古代』など多数。
  • 第22回
  • 2008/6/7
  • 夫 歌寛(シンガーソングライター)
  • 「愛(サラン)と平和(ピョンファ)を語る」
在日韓国人として生を受け、早54年。厳しく激しい差別の中でも何とか道を大きく外さずに今日に至る事ができました。生きるという事は喜びの裏側にある様々な矛盾との葛藤がありますが、歌を通じて皆さんと心の共有ができる事を楽しみにしています。(夫歌寛)

講 師:夫歌寛(シンガーソングライター)
1954年大阪猪飼野生まれ。25歳のときにギターを持ち歌の旅に出る。日本全国の路上やライブハウスで歌い6年後に東京へたどり着く。メッセージ性の強い弾き語りが支持を受け多方面でコンサートを行う。2002年からはバンドでのライブ活動を始める。現在オリジナル曲は500曲を超える。
  • 第23回
  • 2008/7/5
  • 朴 一(大阪市立大学大学院教授)
  • 孫正義(ソフトバンク社長)の企業家精神と
    エスニック・アイデンティティ
日本を代表する移民企業家である孫正義のライフ・ヒストリーと彼の言動から、在日コリアンという出自が孫の企業家としての歩みにどのような影響を与え、孫の経営哲学にどのように反映されているかを考察する。

講 師:朴 一(大阪市立大学大学院教授)
1956年兵庫県尼崎市生まれ。商学博士。専攻は朝鮮半島の政治と経済、日韓・日朝関係論。著書に『在日という生き方』(講談社)、『「在日コリアン」ってなんでんねん』(講談社)、『朝鮮半島を見る眼』(藤原書店)など多数。
  • 第24回
  • 2008/8/2
  • 坂上 弘(作家、日本文藝家協会理事長)
  • 金鶴泳・同時代作家として、友として
1966年『凍える口』で文芸新人賞を受賞し、日本文壇にデビューした金鶴泳。彼は在日二世作家として、民族差別や祖国の分断、父との葛藤、吃音(きつおん)など、多くの苦悩を背景にした小説を書いた。『石の道』・『夏の亀裂』・『冬の光』・『鑿』は芥川賞候補になった。そして46歳で自殺した。

講 師:坂上弘(作家、日本文藝家協会理事長)
慶應義塾大学在学中の19歳の時、「息子と恋人」で芥川賞候補となるなど、常に注目される作家として数多くの作品を発表。『田園風景』で第45回野間文芸賞(1992年)、短編『台所』で第24回川端康成文学賞(1997年)を受賞。現在、慶應義塾大学出版会会長。
  • 読書と酒の会
  • 2008/9/6
  • 文 弘樹(図書出版クレイン代表)
    田口信孝(群馬県立土屋文明記念文学館学芸員)
    櫻井信栄(金鶴泳研究者)
  • 読書と酒の会「『凍える口』の朗読と金鶴泳を語る」
  • 第25回
  • 2008/9/13
  • 山田昭次(立教大学名誉教授)
    姜 徳相(在日韓人歴史資料館館長)
  • フィールドワーク
    関東大震災の史跡をめぐるI(東京・千葉)
関東大震災85周年を迎え、在日韓人歴史資料館が初めて企画するフィールドワーク。貸し切りバス(定員45名)に乗って移動します。コースは次の通り。資料館➝永代橋➝亀戸➝船橋➝習志野➝ふなばし三番瀬海浜公園(昼食・レストランあり)➝荒川土手➝両国(1次解散)➝資料館(2次解散)

講 師:①山田昭次(立教大学名誉教授)
『関東大震災時の朝鮮人虐殺―その国家責任と民衆責任』(創史社)、『植民地支配・戦争・戦後の責任』(創史社)など著書多数。
②姜徳相(滋賀県立大学名誉教授、当館館長)
『関東大震災』(中公新書)、『錦絵の中の朝鮮と中国』(岩波書店)など著書多数。
  • 大阪特別展記念セミナー
  • 2008/9/21
  • 秋定嘉和(大阪人権博物館館長)
    姜 徳相(在日韓人歴史資料館館長)
  • 朝鮮史研究会から大阪人権博物館へ
    在日韓人歴史資料館開設の意味と今後の課題
  • 大阪特別展記念セミナー
  • 2008/9/27
  • 姜在彦(歴史学者)
    朴 一(大阪市立大学大学院教授)
  • 在日歴史家として半世紀を語る
    力道山-海峡を越えた民
  • 大阪特別展記念セミナー
  • 2008/10/5
  • 水野直樹(京都大学教授)
    鄭早苗(大谷大学教授)
  • 資料から読む在日の歴史
    太王四神記の時代-4世紀末から5世紀の東アジア
  • 第26回
  • 2008/11/8
  • 呉 徳洙(映画監督)
  • 日本映画に描かれた在日
日本映画には在日コリアンを描いたもの、または登場する作品が数多くみられる。古くは『にあんちゃん』、『あれが港の灯だ』、『キューポラのある街』、近年では『GO』、『パッチギ!』などがある。これらの映画を解説し、映画の中の在日像に触れたい。また、日本人監督がどんな視点から在日像を描いたかを知る手がかりになればと思う。

講 師:呉徳洙(映画監督)
1966年『白昼の通り魔』の助監督をはじめ、数本の作品に助監督として関わる。1968年東映東京製作所に入所。1979年東映を退社、OH企画を設立。主な監督作品に『指紋押捺拒否』(1984年)、記録映画『在日』(1997年)など。
  • 第27回
  • 2008/12/6
  • 樋口雄一(高麗博物館館長)
  • 朝鮮農民と在日一世女性の食
植民地朝鮮の農村では、人々は何を食べていたのか。栄養は摂れていたのか。具体的に主食、副食などがどのようなものだったのかを考えたい。1世のオモニ達は朝鮮での食文化の経験を持って日本に来た。朝鮮での食生活を活かすための工夫が在日の食文化の中にも見ることが出来る。

講 師:樋口雄一(高麗博物館館長)
朝鮮史研究者。在日朝鮮人運動史研究会代表。
主な著書に『戦時下朝鮮の農民生活誌―1939~1945』(1998年)、『日本の朝鮮・韓国人』(2002年)、『朝鮮人戦時労働動員』(共著、2005年)など。
  • 第28回
  • 2009/1/31
  • 小田川 興(元朝日新聞ソウル支局長)
  • 38度線・非戦への旅
冷戦後、変容する非武装地帯。金剛山、開城での北朝鮮案内人との会話、鉄原の労働党舎跡に伸びる「統一の樹」。過酷な歴史と地政学の「矛盾」が凝縮したマグマに触れつつ、「雪解け」も実感する。日本と朝鮮半島の「痛史」を直視し、平和の源泉は「民草」の絆だと悟る旅の報告。

講 師:小田川興(元朝日新聞ソウル支部長)
早稲田大学、聖学院大学教授。在韓被爆者問題市民会議幹事。朝鮮半島ウォッチ40年。韓国の北方外交、南北国連同時加盟を取材。近著『38度線・非武装地帯を歩く』(高文研)のほか、『日朝交渉―課題と展望』(2003年)、『北朝鮮問題をどう解くか』(2004年)など。
  • 第29回
  • 2009/3/7
  • 李 龍植(丹波マンガン記念館館長)
  • マンガンに生きた朝鮮人と部落
丹波マンガン記念館は日本で唯一の強制連行博物館。日本には日本軍によるアジアの被害者を展示した公営の博物館はない。日本もアジアの被害者の視点に立って人権を考えるべきではないだろうか。そのような熱い思いを込め、一冊の本にした。2009年末で記念館は閉館するが、マンガンの歴史を語りたいと思う。

講 師:李龍植(丹波マンガン記念館館長)
1960年京都府生まれの在日2世。19歳からマンガン鉱山採掘夫として働く。1984年からは硅石鉱山、金鉱山、タングステン鉱山、長石鉱山での採掘に従事。86年から丹波マンガン記念館建設開始、89年開館。95年二代目館長に就任。2006年白頭鉱業(有)代表取締役に就任。
  • 第30回
  • 2009/4/11
  • 山田昭次(立教大学名誉教授)
    姜 徳相(在日韓人歴史資料館館長)
  • フィールドワーク
    関東大震災の史跡をめぐるII(埼玉・群馬)
昨年9月に行われたフィールドワーク「関東大震災の史跡をめぐる」(東京・千葉)の第2弾。
今回は埼玉県(熊谷・本庄)と群馬県(藤岡)の史跡を巡ります。コースは、資料館→首都高速→関越道→嵐山小川IC→熊谷→(桜の名所見学)本庄→藤岡→藤岡IC→資料館になります。貸切バスで移動します。
*資料館出発10時(9時45分集合)

講 師:①山田昭次(立教大学名誉教授)
『関東大震災時の朝鮮人虐殺―その国家責任と民衆責任』(創史社)、『植民地支配・戦争・戦後の責任』(創史社)など著書多数。
②姜徳相(滋賀県立大学名誉教授、当館館長)
『関東大震災』(中公新書)、『錦絵の中の朝鮮と中国』(岩波書店)など著書多数。
  • 第31回
  • 2009/6/6
  • 姜 徳相(在日韓人歴史資料館館長)
  • 図録解説 『写真で見る在日コリアンの100年』
在日韓人歴史資料館開設3周年を記念して図録『写真で見る在日コリアンの100年』(明石書店)が刊行された。A4版160ページの図録は700余点の写真と解説、コラム、文学作品、年表などで構成されている。
苦難と誇りに満ちた在日100年の歴史を当館の姜徳相館長がわかりやすく解説する。図録に込めた館長の熱い思いとともに…。

講 師:姜徳相(在日韓人歴史資料館館長)
一橋大学教授を経て、現在、滋賀県立大学名誉教授。著書に『関東大震災』(中央公論社)、『朝鮮独立運動の群像』(青木書店)、『呂運亨評伝1:朝鮮三・一独立運動』(新幹社)、『呂運亨評伝2:上海臨時政府』(新幹社)、『錦絵の中の朝鮮と中国』(岩波書店)、編著に『現代史資料:朝鮮1~6』(みすず書房)など。講 師:鄭大聲(滋賀県立大学名誉教授。理学博士)
  • 第32回
  • 2009/7/4
  • 邊 龍雄(ぴょんぴょん舎 代表)
  • 盛岡冷麺ものがたり
日本中に広まった「盛岡冷麺」。そのルーツと味の秘密は?
ある在日一世が故郷の味にこだわり「冷麺」をはじめた。それは盛岡市内の30数軒の焼肉店で「平壌冷麺」となった。在日二世の邊氏は日本とコリアの食文化を融合して新たな食として「盛岡冷麺」を創り出した。
セミナーでは去る3月、岩手朝日テレビで放映された「ザ・ルーツ 俺たちの盛岡冷麺」(50分)を上映後、「冷麺は自分自身」と言う講師が「冷麺」の歴史を語る。

講 師:邊龍雄(ぴょんぴょん舎代表)
在日二世。岩手県盛岡市で家業の屑鉄屋を手伝う。事業転換し、1987年「盛岡冷麺」を看板にした「ぴょんぴょん舎」を開店。2008年4月東京のギンザ・グラッセ11階にぴょんぴょん舎「GINZA UNA」をオープン。
  • 第33回
  • 2009/9/5
  • 呉 文子(エッセイスト)
  • 私の歩みをとおして
「楽園」への帰国事業をめぐる、父・夫との断絶。朝鮮大学校教員の夫の辞任。息子のペルー人質事件と娘の突然の死……。
「あの頃はまさに『南・北と日本のはざまで』の激動の時代のただなかで苦しみ、あがきながら在日を生きてきました」(呉文子)
波乱の人生を歩んだ講師が自分史をとおして在日と日本との関わりをあたたかく語る。

講 師:呉文子(エッセイスト)
在日二世。東洋音楽短期大学(現東京音楽大学)卒業。同人誌『鳳仙花』の創刊(1991年)より20号まで、同人代表。在日女性文学誌『地に舟をこげ』編集委員。著書に『パンソリに想い秘めるとき・ある在日家族のあゆみ』(学生社、2007年)。
  • 第34回
  • 2009/10/3
  • 鄭 大聲(滋賀県立大学名誉教授)
  • 秋夕(チュソク・旧盆)にマッコリを楽しもう
いま韓国の酒マッコリが日本で人気だ。消費量が急増している。居酒屋はいうまでもなく、スーパーマーケットでも見かけられる。マッコリ人気の秘密はどこにあるのだろうか?10月3日は秋夕(チュソク)、つまり旧盆である。この日の月見には酒は欠かせない。韓民族の生活文化とマッコリの関わりを語りたい。

講 師:鄭大聲(滋賀県立大学名誉教授。理学博士)
発酵食品、食の文化、朝鮮半島の食文化を専門分野として研究に取り組む。キムチ博士としてテレビ出演多数。著書に『朝鮮の酒』(築地書館)、『ヘルシーキムチ』(祥伝社)、『焼肉は好きですか?』(新潮選書)など。
  • 第35回
  • 2009/11/7
  • 松本昌次(影書房代表)
  • 炎の人、呉林俊さんを想う
呉林俊さんとお会いしたのは1960年代半ばごろ。まさに一瞬の光芒のように、わたしの魂を揺るがした方です。呉さんは、命をけずって汚辱にまみれた日本及び日本人の過去を告発した。呉さんが急逝してから30数年、呉さんの心からの「遺言」を皆さんとともにふりかえり、その光り輝く生涯を追想したいと思う。

講 師:松本昌次(影書房代表)
1927年10月、東京生まれ。高校講師等を経て1953年4月から83年5月まで編集者として未来社に勤務。83年6月影書房を創業。現在に至る。著書に『戦後文学と編集者』、『戦後出版と編集者』(一葉社)、『わたしの戦後出版史』(トランスビュー)など。 
  • 第36回
  • 2009/12/12
  • 伊藤利勝(愛知大学教授)
    姜 徳相(在日韓人歴史資料館館長)
  • 多文化共生社会のあやうさ
    敗戦直後、日本の民主主義と在日
  • 第37回
  • 2010/2/6
  • 中塚 明(奈良女子大学名誉教授)
  • 司馬遼太郎の朝鮮観・『坂の上の雲』に思う
司馬遼太郎描く『坂の上の雲』が話題になっている。「栄光の明治」の大合唱はいかがなものか。「征韓論」以来「韓国併合」まで明治の日本の歩みは朝鮮王朝滅亡の歴史を欠いては成り立たないといえる。つまり栄光と滅亡は表裏一体の関係なのである。司馬は明治日本が自分の都合に合わせて作り上げた日本の痼疾ともいうべき「朝鮮近代化不能論」、「貨幣のなかった朝鮮」論にたち『坂の上の雲』を書いた。その歴史館の限界を鋭くつく。

講 師:中塚 明(奈良女子大学名誉教授)
近代日本における朝鮮問題の重要性を指摘し、日清戦争をはじめ日朝関係の歴史を主に研究。
著書に『近代日本と朝鮮』(三省堂)、『蹇蹇録の世界』(みすず書房)、『これだけは知っておきたい日本と韓国・朝鮮の歴史』『司馬遼太郎の歴史館』(以上、高文研)など。
  • 第38回
  • 2010/3/6
  • 田 月仙(ソプラノ歌手)
  • 海峡のアリア・在日歌姫の想い
在日コリアン二世のオペラ歌手としてデビュー。1985年はピョンヤンで、1994年にはソウルで公演した。2002年日韓共催サッカーワールドカップの時は、首相官邸に招かれ、両国首脳の前で独唱。北と南、日本に引き裂かれた家族の一人でもある歌姫は祖国統一への願いを込めて「高麗山河わが愛」を熱唱。昨年制作されたドキュメンタリー映画「wolson:海峡のアリア」(太田慎一監督)のエピソードも披露する。

講 師:田 月仙(ソフラノ歌手)
二期会会員。世界各国でオペラやコンサートに出演するなど、国境を越えた音楽活動を展開している。著書「海峡のアリア』は2006年第13回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
  • 第39回
  • 2010/4/10
  • 山田昭次(立教大学名誉教授)
    姜 徳相(在日韓人歴史資料館館長)
  • フィールドワーク
    関東大震災の史跡をめぐるIII(神奈川)
フィールドワーク「関東大震災の史跡をめぐる」の第3弾。2008年9月の第1回(東京・千葉)、2009年年4月の第2回(埼玉・群馬)に続き、今回は横浜市の史跡を巡ります。
コースは、資料館→菊名山蓮勝寺→久保山墓地(西区)→宝生寺(南区)→中村川・大岡川(黄金町)→開港記念館→東漸寺(鶴見区)→資料館になります。貸切バス(50名)で移動します。
*資料館出発10時(9時45分集合)

講 師:①山田昭次(立教大学名誉教授)
『関東大震災時の朝鮮人虐殺―その国家責任と民衆責任』(創史社)、『植民地支配・戦争・戦後の責任』(創史社)など著書多数。
②姜徳相(滋賀県立大学名誉教授、当館館長)
『関東大震災』(中公新書)、『錦絵の中の朝鮮と中国』(岩波書店)など著書多数。
  • 第40回
  • 2010/6/5
  • 朴 一(大阪市立大学大学院教授)
  • 力道山伝説-海峡を越えた民
日本国民のヒーローとして今なおその業績が語り継がれている力道山。本名、金信洛(キム・シンラク)は在日コリアンのヒーローであり輝ける星でもあります。
力道山の研究者でもある講師は朝鮮で生まれた金信洛はなぜ日本に渡ってきたのか、なぜ彼はプロレスラーに転向したのか、なぜ力道山は殺されたのか…などを詳しく語ります。秘蔵映像も紹介します。

講 師:朴 一(大阪市立大学大学院教授)
1956年兵庫県尼崎市生まれ。商学博士。専攻は朝鮮半島の政治と経済。日韓・日朝関係論。著書に『在日という生き方』(講談社)、『「在日コリアン」ってなんでんねん』(講談社)、『朝鮮半島を見る眼』(藤原書店)など多数。
  • 第41回
  • 2010/7/3
  • 鈴木裕子(女性史研究家)
  • 山川菊栄と朝鮮・韓国
関東大震災前、山川菊栄と朝鮮人女子留学生との交流がありました。山川は日本のフェミニストでは、唯一、関東大震災の朝鮮人虐殺に対し強く抗議した人でもあり、一貫して性差別、民族差別、階級差別の撤廃を主張し続けた人です。
いわば、日本における「脱帝国のフェミニズム」の提唱者ともいえます。勿論、時代的制約等があって、批判的に検証する面もあります。(鈴木裕子)

講 師:鈴木裕子(女性史研究家、早稲田大学講師)
東京生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。著書に『従軍慰安婦・内鮮結婚』(未来社)、『自由に考え、自由に学ぶ 山川菊栄の生涯』(労働大学)、『フェミニズムと朝鮮』(明石書店)など多数。
  • 第6回企画展記念
  • 2010/7/17
  • 犬養光博(日本基督教団福吉伝道所牧師)
  • セッピョル(明星)を見上げつつ
    -「在日」の「今」を生きた崔昌華牧師-
  • 第42回
  • 2010/9/11
  • 田中正敬(専修大学教員)
  • 震災時の朝鮮人虐殺を捉える
    -地域での調査が明らかにしたことと国家責任-
9月1日から始まる第7回企画展「関東大震災時の朝鮮人虐殺と国家・民衆」を記念しての特別セミナーです。
関東大震災時に虐殺された朝鮮人については、その名前さえもほとんどわかっていません。なぜでしょうか。この問題を地域の視点から時系列に見ることによって、事件を隠蔽した国家の姿が見えてきます。

講 師:田中正敬(専修大学教員)
東京生まれ。一橋大学大学院博士後期課程修了。著書に『関東大震災における朝鮮人虐殺事件と現在』(日朝協会編集・発行)、『世界史としての関東大震災-アジア・国家・民衆』(日本経済評論社、共編著)など。
  • 第43回
  • 2010/10/31
  • 田中敬子(力道山夫人)
  • 夫・力道山の慟哭
  • 第44回
  • 2010/12/4
  • 島村恭則(関西学院大学社会学部教授)
    朴 一(大阪市立大学大学院教授)
  • 戦後を生き抜いたコリアンたち~福岡市での集住とくらし
    力道山伝説~金信洛はなぜ日本に渡ったのか~
  • 第45回
  • 2011/2/5
  • 田中 宏(一橋大学名誉教授)
  • 定住外国人と多文化共生
定住外国人は220万人を超えたといいます。1970年代は「外国人=韓国・朝鮮人」と言われましたが、今では外国人に占めるコリアンの比率は25%に過ぎません。現在、日本社会の各分野で活躍している外国人は少なくありません。しかし、多くの外国人は社会的にも経済的にも、また子供の教育問題でも厳しい状況に置かれています。
国際化を唱える日本で、日本人と定住外国人が共に生きる社会は本当に実現可能でしょうか?

講 師:田中 宏(一橋大学名誉教授)
自由人権協会代表理事、「定住外国人の地方参政権を実現させる日・韓・在日ネットワーク」共同代表等で活躍中。著書に『在日外国人・新版-法の壁、心の溝』(岩波新書)、『来日外国人人権白書』(共著・明石書店)、『日韓「共生社会」の展望』(共著・新幹社)など多数。
  • 第46回
  • 2011/3/5
  • 宋連玉(青山学院大学教授)
  • 映画で見る朝鮮戦争の記憶
朝鮮戦争を描いたハリウッド映画に表象されるのは端正なアメリカ人兵士、派手な日本人娼婦、無知な韓国人少年である。一方、韓国では1990年代に入ると反共国策映画から女性や少年の視点で朝鮮戦争が描かれるようになるが、少年は和解の可能性を展望させる存在として登場する。(宋連玉)
映画作品を通して朝鮮戦争がどのように記憶されてきたのかを考えます。

講 師:宋連玉(青山学院大学教授)
大阪生まれ。専門は朝鮮近現代史、ジェンダー史。韓国文化作品を通した日韓関係史など幅広く研究。
著書に『脱帝国フェミニズムを求めて-朝鮮女性と植民地主義』(有志舎)、『軍隊と性暴力-朝鮮半島の20世紀』(編著・現代史料出版)など多数。
  • 第47回
  • 2011/4/2
  • 金璟炯(1922年生まれ、在日1世)
  • 済州島四・三事件を生きぬいて
「私の金達三に対する印象は、色白でやさしいインテリ文学青年という感じで、この人が武装蜂起を考える人にはとても思えなかった。」「四・三事件が起こったとき…右か左かどちらかはっきりしないと明日の命もわからないということになってしまった。」「あの武装蜂起は無謀だった。島民にとってはあまりにも不幸だった。島民の被害は今でも続いている」(『済州島四・三事件を生きぬいて-聞き書き・金璟炯の半生』より)

講 師:金璟炯(在日一世)
1922年済州島生まれ。父が働く日本と母がいる済州島を往復しながら西宮市立商業学校(現兵庫県立西宮高等学校)を卒業。1947年、済州島へ帰り南朝鮮労働党に入党。1948年10月、闘争資金調達の補助員として大阪に派遣される。東京、埼玉を経て現在、群馬県在住。
  • 第48回
  • 2011/6/4~6/5
  • フィールドワーク2011
  • 松代大本営跡をめぐる
1944年、現・長野市松代町の象山・舞鶴山・皆神山を中心に作られた松代大本営には、天皇制国家を支える中枢機関がまとめて移転する計画でした。この大本営移転工事に約6000人とも言われる朝鮮の人々と地元住民が従事させられました。在日韓人歴史資料館では松代大本営をはじめ朝鮮人強制連行の歴史が刻み込まれている跡をめぐるフィールドワークを企画しました。日本の植民地支配と戦争を考えるうえで貴重な時間となることでしょう。
  • 第49回
  • 2011/7/2
  • 孫正寅(民団横浜支部事務部長)
  • 植民地期と解放後の在日を語る
    -父・孫基禎(ソン・キジョン)を中心に-
1910年から1945年までの36年間、日本は一方的に韓国を「併合」し朝鮮半島を支配しました。植民地期に育った父は1936年ベルリンオリンピック大会のマラソンに出場。「日の丸」をつけて走った父は見事優勝しました。そのことは私たちに何を教えているのでしょうか。当時の父のビデオ映像を見ながら植民地朝鮮と解放後の韓国、そして在日について語りたいと思います。(孫正寅)

講 師:孫正寅(民団横浜支部事務部長)
1943年ソウル生まれ。1967年、韓日国交正常化後の留学一期生として日本に留学。明治大学大学院修士課程修了。1976年~1997年まで民団中央本部国際局長、民生局長を歴任。1999年から現職。
  • 第50回
  • 2011/9/3
  • 呉充功(映画監督)
  • 記録映画が語る関東大震災時の朝鮮人虐殺
    -映画上映と監督トーク-
関東大震災時(1923年9月)の朝鮮人虐殺をテーマにした記録映画「隠された爪痕」は、荒川河川敷での虐殺犠牲者発掘調査(1982年)をきっかけにして、当時、横浜放送映画専門学院で学んでいた呉充功(オ・チュンゴン、監督)さんと日本人学生が卒業作品として製作しました。
その3年後に製作された「払い下げられた朝鮮人」には、今では聞くことのできない貴重な証言などが詰まっています。
呉充功監督を囲んで関東大震災時の朝鮮人虐殺について考えます。

上 映:①14:00~14:58 『隠された爪痕』
(1983年、麦の会製作、58分)
②15:05~15:58 『払い下げられた朝鮮人』
-副題名「関東大震災と習志野収容所」-
(1986年、麦の会製作、53分)
講 演:呉充功監督のトークと質疑応答
(16:10~17:00)
  • 第51回
  • 2011/10/1
  • 愼蒼宇(都留文科大学講師)
  • 『戦争』の視点から日本と朝鮮半島の関係を考える
昨年は韓国強制併合100年、朝鮮戦争開戦から60年の節目にあたる年でしたが、未だ朝鮮半島の軍事的緊張がとかれる兆しは見えてきません。現在の日本は楽観的な韓流ブームが広がる一方、自らの国が隣国において140年ものあいだ、植民地支配や軍事的緊張に深く関わる当事者であるという認識は限りなく薄くなっています。なぜなのかを「戦争」の視点から読み解きたいと思います。(愼蒼宇)

講 師:愼蒼宇(都留文科大学講師)
1970年東京都生まれ。都留文科大学・明治大学・千葉大学非常勤講師。専門は近代朝鮮史。著書に『植民地朝鮮の警察と民衆世界-「近代」と伝統をめぐる政治文化-』(有志舎、2008年)、論文として「韓国軍人の抗日蜂起と「韓国併合」」(『思想』2010年1月号)など。
  • 第52回
  • 2011/11/12
  • 語り手:新井麻里子
    聞き手:朴 一
  • 今だから語れる夫・新井将敬(元衆議院議員)
1998年2月、衆議院議員新井将敬は自ら命を絶った。本名は朴景在、1948年大阪生まれの在日コリアン二世だった。
京都大学医学部受験に失敗、「民族差別ではないか」と思う。東京大学理科1類に入学後「帰化」。新日鐵に入社後1973年に大蔵省に入省。1983年衆議院選挙に立候補して落選。1986年衆議院選挙で当選。「元在日コリアン」の国会議員として注目されたがバッシングも激化… 
出会いから30年間共に暮らした夫人が夫・新井将敬を語ります。

語り手:新井真理子(故新井将敬夫人)
福島県生まれ。JAL国際線スチュワーデスを1年で辞め、上智大学法学部に入学。新井将敬と学生結婚。4人の子どもを育てる。2005年『最後の恋文 天国のあなたへ』を出版。
聞き手:朴 一(大阪市立大学大学院教授)
専門は日韓・日朝関係論。著書に『「在日コリアン」ってなんでんねん?』、『僕たちのヒーローはみんな在日だった』他多数。
  • 第53回
  • 2011/12/3
  • 金石範(作家)
  • 101年目に思うこと、伝えたいこと
「韓国強制併合」から100年を迎えた昨年、韓国側は併合の不当、不法、不義を指摘し、日本側は不法ではないという。歴史認識の違いは一言で、日本が過去の清算をしていないことに尽きる。原因は1945年8月15日の戦争の終わり方と戦後処理にある。今後日本は歴史の反省を踏まえ韓国・朝鮮と新たに向き合うことができるのだろうか…(金石範)

講 師:金石範(作家)
済州島出身の両親のもと1925年大阪で生まれる。『鴉の死』(新興書房、1967年)、『万徳幽霊奇譚』(筑摩書房、1971年)、『往生異聞』(集英社、1979年)、『火山島』(全7巻、文藝春秋、1983~1997年)、など著書多数。現在、雑誌『世界』に「過去からの行進」を連載中(2009年4月号~2011年12月号)。
  • 第54回
  • 2012/2/4
  • 朴鐘碩(日立就職差別裁判元原告)
  • 「日立闘争」から41年、定年退職を迎えて
在日朝鮮人への就職差別が「常識」となっていた日本社会で、その「常識」を覆したのは日立就職差別裁判闘争であった。1974年の勝訴後、弁護士、教師、公務員の門戸が徐々に開かれるようになった。しかし、「在日」だけではなく増え続ける外国人への差別・偏見は現在も続いている。突破口を開いた当事者は日立入社後から今日まで差別、人権、共生をどのように見て、何を感じてきたのか、その一端を語る。

講 師:朴鐘碩(日立就職差別裁判元原告)
1951年愛知県生まれ。1970年、「日本名」で日立製作所の入社試験に合格。しかし国籍を理由に採用を取消され訴訟を起こす。4年後勝訴し、日立製作所に入社。「外国人への差別を許すな・川崎連絡会議」事務局長。共著に『日本における多文化共生とは何か-在日の経験から』(新曜社、2008年)。
  • 第55回
  • 2012/3/10
  • 徐京植(作家、東京経済大学現代法学部教授)
  • フクシマを歩いて
    マイノリティの視点から見えたもの
2011年3月11日の東日本大震災とそれに続く原発事故は「日本」という国や「日本国民」に限って被害を与えたのではない。にもかかわらず、在日朝鮮人などマイノリティの存在は忘れられ「国難」や「復興」という言葉のみが飛び交っている。
マイノリティとしてフクシマをどう見るべきか。震災1周年に考える。(徐京植)

講 師:徐京植(作家)
1951年、京都市生まれの在日二世。東京経済大学現代法学部教授。著書に『子どもの涙―ある在日朝鮮人の読書遍歴』(柏書房)、『分断を生きる「在日」を越えて』(影書房)、『ディアスポラ紀行-追放された者のまなざし』(岩波新書)、『夜の時代に語るべきこと―ソウル発「深夜通信」』(毎日新聞社)など多数。
  • 第56回
  • 2012/4/14
  • 宮田節子(学習院大学東洋文化研究所客員研究員)
  • 同化と差別について
    植民地期を中心に
日本の朝鮮支配の基本方針は、朝鮮人を日本人化することにありました。しかも同化政策は時代が下るに随い一層強化され、終にはその姓まで日本式に改めさせようとしました。しかし日本の同化は差別を含んでいました。つまり都合のいい時だけ日本人として扱い、朝鮮人はあくまでも朝鮮人として差別する。その構造を具体的に話してみたいと思います。(宮田節子)

講 師:宮田節子(学習院大学東洋文化研究所客員研究員)
朝鮮近代史専門。朝鮮史研究会創設に携る。学習院大学東洋文化研究所に所蔵される元朝鮮総督府官僚への聞き取り調査資料収集の中心的人物として録音記録の文章化を行い『東洋文化研究』に掲載中。著書に『朝鮮民衆と「皇民化」政策』(未来社)、『創氏改名』(共著、明石書店)など。
  • 第57回
  • 2012/6/2
  • 金文子(「朝鮮王妃殺害と日本人」著者)
  • 明成皇后殺害について
1895年10月8日、朝鮮の王宮景福宮内で、京城守備隊という日本の軍隊と壮士と称する日本人たちによって、王后閔氏が惨殺され、遺体が焼かれました。この事件を背後で指揮していたのは、朝鮮に赴任してきたばかりの日本の特命全権公使三浦梧楼でした。三浦の目的は何であったか。日本政府と大本営がいかに関与していたか。日本の朝鮮における電信線支配の野望に注目して論じます。(金文子)

講 師:金文子(『朝鮮王妃殺害と日本人』著者)
兵庫県生まれの在日二世。1970年、大阪府立北野高等学校卒。1979年、奈良女子大学文学部修士課程終了。1986年3月まで同大学文学部助手。1998年4月からは大学事務補佐員。論文に「三・一運動と金允植-独立請願書事件を中心に」(『寧楽史苑』29号、奈良女子大学史学会、1984年3月)など。
  • 第58回
  • 2012/7/7
  • 金富子(東京外国語大学大学院教授)
  • なぜ在日朝鮮人一世たちは文字が読めなかったのか
    ジェンダーの視点からみる植民地教育
植民地時代に朝鮮半島で生まれ、日本に渡った在日朝鮮人一世の女性たちの大半は、教育を受けられず、文字を読めませんでした。日本と違って、朝鮮には義務教育制が敷かれなかったためですが、講演では、それだけではなく、朝鮮人初等教育に重点をおいて、民族・階級・ジェンダー相互の関係性について、植民地教育は何だったのかを考えます。(金富子)

講 師:金富子(東京外国語大学大学院教授)
青森県生まれの在日二世。専門はジェンダー史・ジェンダー論、植民地期朝鮮教育史。著書に『継続する植民地主義とジェンダー』(世織書房)、『植民地期朝鮮の教育とジェンダー:就学・不就学をめぐる権力関係』(世織書房)。共著に『性と権力関係の歴史』(青木書店)、『歴史と責任』(青木書店)など多数。
  • 第59回
  • 2012/11/10
  • 姜徳相(在日韓人歴史資料館館長)
  • ソウル特別展を終えて思うこと
今年8月10日から9月30日までソウル特別展「日本の中のアリラン-在日同胞の100年(仮題)」がソウル歴史博物館で開催されます。2005年11月に当館が開設して以来、私は韓国での展示を希望してきました。それは日本の厳しい差別の中でも民族的な誇りを抱き生きてきた在日韓人の歴史を、本国の人々に伝えたかったからです。ソウル展の意義について考えます。(姜徳相)

講 師:姜徳相(在日韓人歴史資料館館長)
一橋大学教授を経て、現在、滋賀県立大学名誉教授。著書に『関東大震災』(中央公論社)、『朝鮮独立運動の群像』(青木書店)、『呂運亨評伝1:朝鮮三・一独立運動』(新幹社)、『呂運亨評伝2:上海臨時政府』(新幹社)、『錦絵の中の朝鮮と中国』(岩波書店)、編著に『現代史資料:朝鮮1~6』(みすず書房)など。
  • 第60回
  • 2012/12/1
  • 桜井 泉(朝日新聞記者)
  • 12・19 韓国大統領選挙の行方
12月19日の韓国大統領選挙が目前に迫っています。保守派と進歩派が激しくぶつかる韓国で、今後5年間の政治指導者に選ばれるのはだれか。保守派と進歩派の主張の違いは何なのか。大統領選挙の結果が、これからの日韓関係や南北関係にどのような影響を及ぼすのか。過去の取材経験や、世論調査、現地報道などによる最新情勢を踏まえ、やさしく韓国政治のイロハを解説します。(桜井泉)

講 師:桜井泉(朝日新聞記者)
1984年朝日新聞社入社、熊本、福岡県飯塚市、北九州市などで勤務。1997年、2002年の大統領選を韓国で取材。取材や旅行で、韓国全土に足を運んだ。共著に「歴史は生きている 東アジアの近現代がわかる10のテーマ」(朝日新聞出版)、「韓流ハンドブック」(新書館)、「新聞記者が高校生に語る 日本と朝鮮半島100年の明日」(彩流社)。
  • 第61回
  • 2013/2/2
  • 朴炳渉(竹島=独島問題研究ネット代表)
  • 竹島=独島問題研究の最前線
日本は、江戸幕府や明治政府が竹島=独島を朝鮮領と判断したことが何度かありましたが、同島を編入以前に日本領と判断したことは一度たりともありませんでした。その一方、日本の編入前後における韓国の竹島=独島活用の実態がここ数年の間に次々と明らかにされました。そうした新事実を盛りこんで竹島=独島問題を解説します。(朴炳渉)

講 師:朴炳渉(竹島=独島問題研究ネット代表)
1966年東京教育大学修士課程修了。韓国語学研修を経て日本企業に勤務。『半月城通信』(ウェブサイト)で「従軍慰安婦」問題や竹島=独島問題などを発信。著書に『韓末期の欝陵島・独島漁業』(韓国海洋水産開発院)、『安龍福事件に対する検証』(同)、共著に『竹島=独島論争』(新幹社)、訳書に『欝陵島・独島(竹島)歴史研究』(同)などがある。
  • 第62回
  • 2013/3/2
  • 高柳俊男(法政大学国際文化学部教授)
  • 日本の農山村に残る朝鮮半島の生活文化
    -長野県・伊那谷から考える-
朝鮮半島が日本の植民地だった時代、朝鮮半島から大勢の人が日本内地に渡って来て、さまざまな職業に従事しました。そこでは、言葉や生活習慣の違いからくる摩擦や対立がありましたが、同時に人間的な交流や文化の影響もあったとみるべきでしょう。その例として長野県の伊那地方を取り上げ、朝鮮人が暮らすことで現地に残った朝鮮文化の痕跡を考察します。(高柳俊男)

講 師:高柳俊男(法政大学国際文化学部教授)
1956年生まれ。専門は朝鮮近現代史、在日朝鮮人史。大学1年の時に、NHKに朝鮮語講座を要望する署名運動に出会い、そこに集まった仲間と「鐘声の会」を結成。現在まで読書会活動を継続するとともに『鐘声通信』を月刊で発行している。
  • 第63回
  • 2013/4/6
  • 有光健、李鶴来、岡田泰平
    「同進会」を応援する会世話人
    韓国・朝鮮人元BC戦犯者「同進会」会長
    成蹊大学文学部助教·「同進会」を応援する会世話人
  • 未解決の韓国・朝鮮人BC級戦犯問題を考える
    -これまでの歩みと現状、そして今後の課題-
朝鮮人はなぜ、戦犯=戦争犯罪人になったのでしょうか。現在も続いている韓国・朝鮮人BC級戦犯問題を考えます。有光健氏からは「韓国・朝鮮人BC級戦犯問題・これまでの歩みと2013年の課題」を、李鶴来氏からは「私の歩いてきた道・そして今訴えたいこと」を、岡田泰平氏からは「米国管理下スガモプリズン関係資料からみた朝鮮人BC級戦犯者問題」を報告していただきます。報告後には、1995年に制作・展示された写真パネルなどの紹介もあります。

講 師: 有光健(「同進会」を応援する会世話人)
李鶴来(韓国・朝鮮人元BC級戦犯者「同進会」会長)
岡田泰平(成蹊大学文学部助教、「同進会」を応援する会世話人)
  • 第64回
  • 2013/6/1
  • 雨宮 剛(青山学院大学名誉教授)
  • もう一つの強制連行
    -謎の農耕勤務隊にこだわり続けて-
大戦末期(45.5)、ある日突然全国各地に鍬を担いだ青少年の一隊が現れた。朝鮮から強制連行されていた「陸軍農耕勤務隊」と呼ぶ。荒蕪地を開墾し、甘藷(さつま芋)作りを目的とした。当時私は10才の少年。苛酷な労働と飢餓と制裁に苦しむ彼らをほとんど毎日わが家の前で目撃した。少年の心は深く痛んだ。以来ずっと私は彼らにこだわり続けている。これが5年間(2007~12)に及ぶ調査へとつながる。(雨宮剛)

講 師:雨宮剛(青山学院大学名誉教授)
1934年、愛知県生まれ。1957年青山学院大学文学部英米文学科卒業。1962年米国コロンビア大学大学院修士課程卒業(MA)。2003年まで青山学院大学教授。LHD(人文学博士)。昨年、「もうひとつの強制連行・謎の農耕勤務隊-足元からの検証-」を自費出版。
  • 第65回
  • 2013/7/6
  • 川田文子(ノンフィクション作家)
  • 2人、あるいは3人の在日「慰安婦」
    - 「慰安婦」に加えられた「強制」の本質 -
在日の「慰安婦」裁判のただ1人の元原告宋神道さんは戦後、女川で暮らし、東北大震災の時、家を流された。「慰安婦110番」に寄せられた情報をもとに私が宋さんを訪ねたのは沖縄で裴奉奇さん、和宇慶たま子さんの証言を聞き続けた経験からだ。「慰安婦」被害の最初の証言者である裴さんは1991年10月に他界、和宇慶さんは日本人か朝鮮人か不明のまま1カ月後に亡くなった。3人の人生譚は……。(川田文子)

講 師:川田文子(ノンフィクション作家)
茨城県生まれ。早稲田大学文学部卒業。日本の戦争責任資料センター共同代表。在日の慰安婦裁判を支える会所属。現在、在日ハルモニ(おばあさん)の戦中戦後を取材中。著書に『赤瓦の家-朝鮮から来た従軍慰安婦』(筑摩書房)、『イアンフとよばれた戦場の少女』(高文研)、『「慰安婦」問題が問うてきたこと』(共著、岩波ブックレット)他。
  • 第66回
  • 2013/9/7
  • 呉徳洙(映画監督)
  • 本映画に描かれた「在日」Ⅱ
    上 映: 『 あれが港の灯(ひ)だ 』
日本映画には在日が登場する作品が多い。時代によっては差別的であったり、良心的・友好的であったり、その描かれ方もさまざまだ。今回は今井正監督の『あれが港の灯(ひ)だ』(1961年)を上映する。作品は韓国が一方的に設定した李ライン(韓国では平和ライン)を背景に、日本漁船で働く在日青年の苦悩と民族問題を描いている。さて、その結末は……。(呉徳洙)

上 映:『 あれが港の灯だ 』(14:10~15:55、無料)
(今井正監督、東映、1961年、105分)

講 演:呉徳洙(映画監督)(16:00~17:00)
秋田県鹿角市生まれ。早稲田大学文学部卒業。「在日を映像で記録する会」代表。東映退社ののちOH(オー)企画設立。主な作品に『車イスの道』、『指紋押捺拒否』、『ナウ!ウーマン土井たか子』、『まさあきの詩』、『民族の祈り・祭祀(チェサ)』、『戦後在日五○年史・在日』他。
  • 第9回企画展記念
  • 2013/9/14
  • 1部:姜徳相
    2部:山本すみ子、西崎雅夫、平形千恵子
  • 関東大震災から90年、清算されない過去
    -関東大震災90周年・朝鮮人犠牲者追悼-
    1部 朝鮮人虐殺をどうみるか-日本の朝鮮観の形成
    2部 関東地域における虐殺実態と真相究明活動の現状
  • 第67回
  • 2013/10/5
  • 鄭栄桓(明治学院大学准教授)
  • 在日朝鮮人にとって“4.28”とは何であったか
    - 講和・国籍・植民地支配責任-
いまから61年前の4月28日はサンフランシスコ講和条約が発効した日にあたる。今年、日本政府がこの日にはじめて「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」を開催したことは記憶に新しいが、この日は一方で日本が「朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄」(サンフランシスコ講和条約第二条a)したことにより朝鮮人の「日本国籍」の喪失措置が採られた日でもあり、また、外国人登録法が公布施行された日でもある。朝鮮戦争の只中、日本に暮らしていた朝鮮人にとって、果たして“4.28”とはいかなる意味を持っていたのか。歴史的視点から考えてみたい。(鄭栄桓)

講 師:鄭栄桓(明治学院大学准教授)
千葉県生まれ。在日朝鮮人史・朝鮮近現代史を専攻。立命館大学コリア研究センター専任研究員を経て、現職。著書に『朝鮮独立への隘路-在日朝鮮人の解放五年史』(法政大学出版局、2013年)、論文に「植民地の独立と人権 在日朝鮮人の『国籍選択権』をめぐって」(『PRIME』36号、明治学院大学国際平和研究所、2013年)ほか多数。
  • 第68回
  • 2013/11/2
  • 山本興正(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)
  • 梶村秀樹と日本の排外主義
    -『排外主義克服のための朝鮮史』を中心に考える-
今日の日本社会は、大衆次元で排外主義がむき出しにされた状況にある。自らを省みることなく他者を傷つけることを厭わない感覚は、昔も今も不変である。今回は、戦後の重要な朝鮮史研究者・梶村秀樹の『排外主義克服のための朝鮮史』(青年アジア研究会、1971年、『梶村秀樹著作集』第1巻所収)を中心に、梶村のテキストを当時の時代状況のなかで読むことによって、今日の排外主義への向き合い方を考えたい。(山本興正)

講 師:山本興正(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)
愛知県安城市生まれ。研究テーマは、朝鮮史研究者・梶村秀樹の思想と社会関与について。また日本の入管体制(とそれに対する反対運動)についても関心がある。共訳書に、金廣烈ほか著『帝国日本の再編と二つの「在日」—戦前戦後における在日朝鮮人と沖縄人』(明石書店、2010)がある。
  • 第69回
  • 2013/12/7
  • 李羲八(樺太帰還在日韓国人会会長)
  • サハリンに置き去りにされた朝鮮人
    -残された同胞の帰還を求めて-
解放前、樺太と呼ばれ日本の領土だったサハリンには、出稼ぎや企業の募集・徴用などで多くの朝鮮人が渡っていた。解放後、サハリンの日本人は引き揚げたが、朝鮮人は日本国籍を有しないとされ置き去りにされた。その数は4万3千人ともいわれる。 日本人妻の夫として1958年に東京に引き揚げて来た李羲八さんは一緒に引き揚げた仲間たちと韓国人会を結成し、残されたサハリン同胞の帰還や韓国の家族との再会を実現するための活動を続けてきた。その半生を聞き手・長澤氏を交えて語る。

語り手:李羲八(樺太帰還在日韓国人会会長)
1923年慶尚北道生まれ。1943年5月、募集で樺太へ。2年契約満了後に現地徴用される。1958年、日本人の碓井英子(故人)さんの夫として日本に引き揚げる。
聞き手:長澤秀(在日朝鮮人運動史研究会会員)
日本各地の炭鉱での強制連行を研究していた1980年頃に、サハリンの炭鉱に連行された朝鮮人のことを知り、それ以後、長年樺太帰還在日韓国人会の聞き書きを続けている。
  • 第70回
  • 2014/2/1
  • 金耿昊(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)
  • 日朝鮮人社会における「貧困」の現在と過去
    -生活保護「問題」を中心に-
いま日本では、朝鮮人に対する差別的言動(ヘイト・スピーチ、ヘイト・クライム)があらためて立ちあらわれています。そしてそのなかで頻繁に繰り返されているのが、在日朝鮮人の生活保護受給「特権」論です。今回の講演ではその中身を検証しつつ、在日朝鮮人と生活保護受給との関係がどのようなものであったかを現在と過去から考えてみたいと思います。戦後日本のなかで一世世代に引き続けられてきた民族差別と貧困の問題を見つめ直すことから、この問題を解き明かす糸口を共に展望していきましょう。(金耿昊)

講 師:金耿昊(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)
神奈川県横須賀市生まれ。在日三世。1984年生。専攻は在日朝鮮人史、社会運動史。とりわけ解放後における在日朝鮮人の生活権擁護運動。解放後の在日朝鮮人史を民族差別と貧困の観点からとらえなおす試みを目下の課題としている。編著に『在日朝鮮人生活保護資料(在日朝鮮人資料叢書 8)』(緑蔭書房、2013)等がある。
  • 第71回
  • 2014/3/1
  • 金貴粉(国立ハンセン病資料館学芸員)
  • 在日朝鮮人とハンセン病
日本のハンセン病療養所には戦前から現在に至るまで多くの在日朝鮮人が暮らしています。なぜそれほど多くの在日が療養所に存在するのでしょうか?その理由として、ハンセン病の感染や発病には環境が大きく影響することから発病に至るほどの劣悪な状況に置かれていたと考えられます。本講演では、在日朝鮮人ハンセン病患者・回復者の歴史と現在について日本のハンセン病史をふまえて考えていきたいと思います。(金貴粉)

講 師:金貴粉(国立ハンセン病資料館学芸員)
現在、在日朝鮮人ハンセン病患者史、ハンセン病患者による芸術活動を主な研究テーマとして活動している。論文に「解放後における在日朝鮮人ハンセン病患者の「位置」-1945年から1950年代を中心にー」(『クァドランテ』9、東京外国語大学海外事情研究所)、「在日朝鮮人ハンセン病患者と出入国管理体制」(『学術論文集』27、朝鮮奨学会)等がある。
  • 第10回企画展記念
  • 2014/3/8~29
  • 3/8 ① 梁澄子
    3/15 ② 西野瑠美子
    3/29 ③ 吉見義明
  • 今だから聞きたい!日本軍「慰安婦」問題
    ① 日本軍「慰安婦」問題解決のために
    ② 日本軍「慰安婦」問題と日本政府の責任
    ③ 日本軍「慰安婦」制度とは何か
  • 第72回
  • 2014/4/5
  • 外村大(東京大学大学院総合文化研究科准教授)
  • 朝鮮人強制連行を考える
用語としては有名ながら、一般には誤解も多い歴史事象である、朝鮮人強制連行と言われる労務動員について、その歴史がどのように語られてきたか、どのように研究されて来たかを整理した上で、実態解明の現状、研究の今後の課題などについて述べて行く。その上で、現在、わたしたちがその歴史を記憶し伝えて行く意義について論じる。(外村大)

講 師:外村大(東京大学大学院総合文化研究科准教授)
日本近現代史についてエスニックマイノリティである在日朝鮮人に着目して研究を進めている。著書に『在日朝鮮人社会の歴史学的研究』(緑蔭書房、2004)、『朝鮮人強制連行』(岩波書店、2012)、論文に「植民地に生きた朝鮮人にとっての日本―民族指導者尹致昊の日記から見えてくるもの」(『日本の科学者』第45巻12号、2010年11月)ほか多数。
  • 第11回企画展記念
  • 2014/5/10~6/14
  • 5/10 ① 安世鴻
    5/17 ② 永田浩三
    5/24 ③ 中西新太郎
    6/14 ④ 金富子
  • 安世鴻写真展  重重
    中国に残された朝鮮人日本軍「慰安婦」
  • 第73回
  • 2014/6/7
  • 李杏理(一橋大学大学院博士課程)
  • 「解放」直後における在日朝鮮人の濁酒戦争
    -取締り決定過程を中心に-
本発表は1945年から1949年までの在日朝鮮人による濁酒闘争について、取締り側の政策決定過程を中心に考察する。「解放」後の朝鮮人は、7割以上が失業状態となり、露店商・濁酒づくりといった非合法な業に手を出さざるをえなかった。敗戦後日本において、主食と税収確保の名の下に酒づくりは厳しく禁じられていく。そして1947年の川崎事件を契機として治安問題の口実を得つつ、朝鮮人に対する重点的な濁酒取締りがなされた。朝鮮人住民はそれに対しさまざまな抗議闘争をおこなった。(李杏理)

講 師:李杏理(一橋大学大学院博士課程)
専門は植民地「解放」後在日朝鮮人の生活史・ジェンダー。論文に「「解放」直後における在日朝鮮人に対する濁酒取締り行政について」(『朝鮮史研究会論文集』第51集、2013年10月)など。
  • 第74回
  • 2014/7/12
  • 高橋哲哉(東京大学大学院総合文化研究科教授)
  • 「靖国」という問題
日本の近代国家の成立とともに誕生した靖国神社は、その後の台湾出兵、日清戦争、日露戦争をはじめとする、日本軍が行ったあらゆる戦争の戦死者を祀っています。その中でも日中戦争から太平洋戦争の膨大な死者が祀られてきました。日本の植民地主義とその歩みをともにした「靖国」の歴史をたどりながら、それが国家の措置としてどのような役割を担ってきたのか、なぜ今もなお「問題」としてあり続けるのかを考えます。

講 師:高橋哲哉(東京大学大学院総合文化研究科教授)
1956年、福島県生まれ。専門は西洋哲学。戦争やジェノサイドに関する歴史・記憶・責任などの表象も研究対象としている。著書に『靖国問題』(筑摩書店、2005)、『戦後責任論』(講談社、1999)、『歴史/修正主義』(岩波書店、2001)、『状況への発言-靖国そして教育』(青土社、2007)など多数。
  • 第75回
  • 2014/8/2
  • 井上勝生(北海道大学名誉教授)
  • 抗日・東学農民戦争、隠蔽された殲滅作戦
    -日清戦争120周年にあたって-
日清戦争で、朝鮮半島へ侵入した日本軍に対して、東学農民を中心として朝鮮民衆は、国土ほぼ全域で、激しく、命がけで抗日蜂起しました。この東学農民軍を、日本は徹底的に殲滅しました。第二次東学農民戦争です。この戦争は、現在、日本で一部の歴史教科書に記されはじめています。この抗日戦争の掘り起こしについてお話したいと思います。現在は、黄海道など北部の東学農民を討伐した日本軍の調査にあらたに取組中です。(井上勝生)

講 師:井上勝生(北海道大学名誉教授)
1945年、岐阜県生まれ。専門は、明治維新史。1995年以来、東学農民軍を殲滅した日本軍について研究している。東学農民軍と日本軍についての著書に『東学農民戦争と日本』(共著、高文研、2013)、『明治日本の植民地支配』(岩波現代全書、2013)、明治維新について、『日本近現代シリーズ1幕末・維新』(岩波新書、2006)など。
  • 第76回
  • 2014/9/6
  • 辛淑玉(のりこえねっと共同代表)
  • いま、何が起きているのか
    -現代日本のヘイトスピーチとレイシズム-
近年の日本社会では在日外国人(とりわけ在日コリアン)に対する排外主義が高まっています。インターネットや街頭のデモで朝鮮人を標的にした差別言動が繰り返される一方、極右政治家による歴史歪曲の動きや朝鮮学校への差別政策も顕著になっています。そんな状況をどのようにのりこえることができるでしょうか。マイノリティーの視点に立ってひとびとを隔てる差別に抗い、垣根を越えて共に生きる道すじを考えてみましょう。

講 師:辛淑玉(のりこえねっと共同代表)
1959年、東京生まれの在日三世。1985年、(株)香科舎を設立し、人材育成の専門家として人権・男女共同参画の研修・講演等で活躍。またテレビ・新聞で日本の差別と排外主義克服のための言論活動を展開している。著書に『怒りの方法』(岩波新書)、『鬼哭啾啾』(解放出版社)、『差別と日本人』(角川Oneテーマ21、野中広務と共著)など多数。
  • 第77回
  • 2014/10/4
  • 前田朗(東京造形大学教授、のりこえねっと共同代表)
  • 表現の自由を守るためにヘイト・スピーチを処罰する
「ヘイト・スピーチの規制か、表現の自由か」という短絡的な二者択一は間違いである。西欧民主主義諸国は全てヘイト・スピーチを処罰する。民主主義と表現の自由を守るためであり、人間の尊厳を保護するためである。ヘイト・スピーチの基礎知識(定義、行為、被害)を確認し、国際常識を身につけ、虚妄の「表現の自由」論に惑わされないようにしたい。(前田朗)

講 師:前田 朗(東京造形大学教授、のりこえねっと共同代表)
1955年札幌生まれ。中央大学法学部、同大学院法学研究科を経て現職。著書に『戦争犯罪論』(青木書店)、『軍隊のない国家』(日本評論社)、『非国民がやってきた!』(耕文社)、『人道に対する罪』(青木書店)、『9条を生きる』(青木書店)、『増補新版ヘイト・クライム』(三一書房)、『なぜ、いまヘイト・スピーチなのか』(三一書房)、『国民を殺す国家』(耕文社)。
  • 第78回
  • 2014/11/8
  • 吉田裕(一橋大学社会学研究科教授)
  • 現代日本の排外主義と戦後民主主義
現代日本における排外主義やナショナリズムの台頭は、歴史的にどのような状況の中で形成されたのでしょうか。ヘイト・スピーチの源流には、戦前期の日本(軍)の戦争犯罪・戦争責任問題を隠蔽し、大日本帝国の侵略戦争を美化しようとする歴史修正主義の動きがあります。またそれは、日本国憲法にもとづいて民主主義を実現させようとする動きへの反発として形成されたものでした。日本人の戦争観・平和主義・民主主義が、排外主義との関係でいまあらためて問われているといえるでしょう。

講 師:吉田 裕(一橋大学社会学研究科教授)
1954年埼玉県生まれ。専門は日本近現代政治史・軍事史。YOSHIMI裁判いっしょにアクション(YOいっション)共同代表。著書に『日本人の戦争観』(岩波現代文庫、2005)、『アジア・太平洋戦争』(岩波新書、2007)、『兵士たちの戦後史』(岩波書店、2011)、『現代歴史学と軍事史研究』(校倉書房、2012)など。
  • 第79回
  • 2014/12/6
  • 姜徳相(滋賀県立大学名誉教授、当館館長)
  • 日本の朝鮮観の形成
①尊王討幕=尊王征韓(征韓論の昂揚)②天皇制の確立(壬午軍人暴動、民衆的排外ナショナリズム)③甲午農民戦争(韓日戦争)甲午中日戦争(韓・中差別観の定着)④露日戦争、義兵戦争(暴力支配の確立)⑤韓国併合(明治の栄光史観完成)⑥3.1独立運動(民族対立をかかえる帝国)⑦皇民化政策(民族抹殺政策)
以上の「近代日本の対韓認識について」語ります。(姜徳相)

講 師:姜徳相(在日韓人歴史資料館館長)
一橋大学教授を経て、現在、滋賀県立大学名誉教授。著書に『関東大震災』(中央公論社)、『朝鮮独立運動の群像』(青木書店)、『呂運亨評伝1:朝鮮三・一独立運動』(新幹社)、『呂運亨評伝2:上海臨時政府』(新幹社)、『錦絵の中の朝鮮と中国』(岩波書店)、編著に『現代史資料:朝鮮1~6』(みすず書房)など。
  • 在日韓人歴史資料館 10周年記念
  • 2015/1/17
  • 語り手:呉炳学
    聞き手:山川修平(ジャーナリスト)
  • 「海峡をつなぐ民族の色」
    自分の道を貫く-呉炳学の世界
  • 第80回
  • 2015/2/7
  • 金文子(『日露戦争と大韓帝国』著者(高文研、2014))
  • 大韓帝国と日露戦争
日露戦争が1904年2月6日、日本海軍による鎮海湾占領から開始されたこと、引き続き日本陸軍は2月8日深夜に仁川に上陸し、翌9日ソウルを占領した事実を明かにする。そしてこの日本の軍事行動は、前年8月から日露両国に対し韓国の戦時中立の保障をもとめ、また1904年1月には世界に向かって日露の紛争に際し「局外中立」を守ることを宣言し、諸外国から承認を得ていた大韓帝国に対する明白な侵略行為であったことを論じる。(金文子)

講 師:金文子(『日露戦争と大韓帝国』著者(高文研、2014))
兵庫県生まれの在日二世。1979年、奈良女子大学文学部修士課程修了。86年3月まで同大学文学部助手。98年4月からは同大学学生相談室勤務。著書に『朝鮮王妃殺害と日本人』(高文研、2009)、論文に「朴珪寿の実学」(『朝鮮史研究会論文集』17号、1980年3月)、「三・一運動と金允植-独立請願書事件を中心に」(『寧楽史苑』29号、奈良女子大学史学会、1984年3月)など。
  • 第81回
  • 2015/3/7
  • 小川原宏幸(同志社大学グローバル地域文化学部准教授)
  • 東アジアの地域共同体構想をあらためて考える
    ~安重根の「東洋平和論」を手がかりに~
1909年、元統監である伊藤博文を射殺した安重根の記念館が中国黒竜江省ハルビン市に2014年初頭に設置された。同記念館の設置をめぐって日本政府が即座に嫌悪感を示したことは記憶に新しいが、安重根の歴史的評価をめぐり東アジアにおける葛藤があらためて生じている。今回は、安重根が提唱した「東洋平和論」を朝鮮思想史の文脈から読み解き、東アジアにおける地域共同体構想のあり方について皆さんともう一度考えていきたい。(小川原宏幸)

講 師:小川原宏幸(同志社大学グローバル地域文化学部准教授)
専門は近代日本史、近代日朝関係史、植民地研究など。青山学院大学非常勤講師などを経て現職。主な著書に『伊藤博文の韓国併合構想と朝鮮社会-王権論の相克』(岩波書店、2010年)、論文に「いま、私たちの歴史認識を問う―伊藤博文の韓国統治をめぐって」(『歴史地理教育』2011年)など多数。
  • 第82回
  • 2015/4/4
  • 河かおる(滋賀県立大学人間文化学部講師)
  • 戦時期に日本が女性に求めた役割の民族的非対称性について考える ~「一国史」の克服のために~
戦時中、日本では「産めよ殖やせよ」をスローガンに、女性が子を産み母となり、「立派な兵隊さん」を育てあげ戦地に送り出すことが求められました。その一方で、日本の植民地であった朝鮮や台湾からは多くの女性が「慰安婦」として動員され、戦地、占領地では日本軍の兵士が現地女性を強姦して殺すという事件が多発しました。このように、戦争を遂行するために日本が女性に求めた役割が民族によって異なることの意味を考えてみます。(河かおる)

講 師:河かおる(滋賀県立大学人間文化学部講師)
1971年生まれ。専攻は朝鮮近現代史。学習院大学東洋文化研究所助手を経て現職。論文に「植民地期朝鮮における同友会-植民地下ナショナリズムについての一考察」(『朝鮮史研究会論文集』1998年10月)、「総力戦下の朝鮮女性」(『歴史評論』2001年4月)、「朝鮮金融組合婦人会について」(『姜徳相教授退職記念日韓・日朝関係史論文集』明石書店、2003年)など。
  • 第83回
  • 2015/5/9
  • 古関彰一(獨協大学名誉教授)
  • 在日の選挙権の歴史
日本統治下、朝鮮人は日本臣民であったにも関わらす、日本政府の都合によって選挙権が奪われ、あるいは一時期与えられ、戦後は日本国憲法下で在日も選挙権が奪われています。その変遷の歴史と法制度をたどりつつ、選挙権の意味、国籍や国民の意味を検討します(古関章一)。参考著書に『日本国憲法の誕生』(岩波現代文庫、2009年)、「帝国臣民から外国人へ―与えられ・奪われてきた朝鮮人・台湾人の参政権」『世界』2010年10月号

講 師:古関彰一(獨協大学名誉教授)
1943年東京都生まれ。日本の法学者。専門は憲法史。
\和光大学経済学部教授などを経て、1991年から獨協大学法学部教授。1989年、『新憲法の誕生』(中公文庫)で第7回吉野作造賞を受賞。主な著書に『憲法九条はなぜ制定されたか』(岩波ブックレット、2006年)、『「平和国家」日本の再検討』(岩波現代文庫、2013年)
  • 第84回
  • 2015/6/6
  • 吉澤文寿(新潟国際情報大学国際学部教授)
  • 日韓会談と在日朝鮮人
1965年に妥結した日韓国交正常化交渉は在日朝鮮人の法的地位および処遇についての議論から始まりました。そして、交渉担当者は「善良な」朝鮮人と「悪質な」朝鮮人に分け、前者には永住許可を与えたり、帰化を推進しようとしました。その一方で、後者には退去強制を図ることで、在日朝鮮人の序列化、さらに在日朝鮮人問題そのものの「消去」を目指しました。この講演ではそのような交渉過程とともに、議論の行方を眼差し、行動した在日朝鮮人の活動を検証してみます。

講 師:吉澤文寿(新潟国際情報大学国際学部教授)
専門は朝鮮現代史、日朝関係史。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。韓国湖南大学校専任講師などを経て、現職。主な著書に『戦後日韓関係 国交正常化交渉をめぐって』(クレイン、2005年)、共著に『歴史としての日韓国交正常化Ⅱ脱植民地化編』(法政大学出版局、2012年)、『議題で見た韓日会談〔外交文書公開と韓日会談の再照明2〕』(ソンイン、2010年)等多数。
  • 第85回
  • 2015/7/11
  • 鄭在貞(ソウル市立大学校国史学科教授)
  • 開館10周年記念特別セミナー
    帝国日本の植民地支配と韓国鉄道
20世紀前半日本が北東アジアを侵略・支配するため韓半島に構築·運営した鉄道は、日本と欧州・アジアを連結する橋梁的性格が強く、北東アジアの国際鉄道網の中枢をなした。日本が運行した国際列車は北東アジアに日本の勢力を浸透させ、支配力を強める神経の役割を果たした。北東アジア鉄道交通の結節地域である韓半島は歴史と文化、植民地統治の来歴と成果を確認できる鉄道旅行コースとしても脚光を浴びた。北東アジアの鉄道交通が緊密になるにしたがい韓半島の外延は拡大し、内包は厚くなった。1941年前後がピークだった。(鄭在貞)

講 師:鄭在貞(ソウル市立大学校国史学科教授)
専門は韓国近代史・韓日関係史。ソウル大学校師範大学歴史教育科卒業。東京大学大学院人文科学研究科東洋史学専門課程修了(修士)。ソウル大学校大学院国史学科修了(博士)。ソウル市立大学校人文大学学長、韓国東北亜歴史財団理事長、日韓歴史共同研究委員会委員を歴任。主な著書『帝国日本の植民地支配と鉄道:1892~1945』(明石書店2008)、共著に『日韓歴史共通教材』(明石書店2007)等多数。
  • 第86回
  • 2015/8/1
  • 青柳敦子(朝鮮人徴兵・徴用に対する日本の戦後責任を求める会)
  • 浮島丸事件に対する日本の戦後責任
1945年8月24日、京都・舞鶴湾内で母国に帰国する多くの朝鮮人を乗せた浮島丸が沈没。日本政府作成の「浮島丸死没者名簿」では海軍軍属410名、民間人114名、合わせて524名が死亡したとされている。1950年、日本政府は浮島丸の引き揚げに際し、在舞鶴の朝鮮人団体の要求に応えて「浮島丸死没者名簿」を渡し、死亡者に弔慰金を準備していることを伝えた。しかし、日本政府は遂に遺族たちに弔慰金を支払うことはなかった。浮島丸から引き揚げられた遺骨は、現在も280体が東京目黒の祐天寺に安置されたままである。(青柳敦子)

講 師:青柳敦子(朝鮮人徴兵・徴用に対する日本の戦後責任を求める会)
1985年故宋斗会氏に出会い初めて在日の歴史的経緯と国籍
問題、サハリン在留朝鮮人問題、朝鮮人の戦争動員を知る。以来、在日朝鮮人の日本国籍確認訴訟、韓国の遺族たちに公式陳謝と賠償を求める裁判、光州千人訴訟、浮島丸訴訟に携わった。主な著書『報告・浮島丸事件訴訟』(南方新社2001)『朝鮮人徴兵・徴用に対する日本の戦後責任』(風媒社2005)
  • 第87回
  • 2015/9/5
  • 朴壽南(ドキュメンタリー映画監督・作家)
  • 1部:「アリランのうた-オキナワからの証言」映画上映
    2部:トークショー 光復70年から取り残された課題
    -小松川事件の根底的な課題と今-
1958年江戸川区の小松川定時制高校で女子高生殺害事件が発生。逮捕されたのは日本名「金子鎮夫」、当時18歳の在日朝鮮人2世李珍宇(イ・チヌ)。「極悪非道の朝鮮人」とセンセーショナルに報道され、少年法の適応も精神鑑定もないまま、22歳で絞首刑にて命を絶たれた。
優秀な成績でありながらも極貧から抜け出せず、朝鮮人という理由で就職の門も閉ざされた、その時に事件は起こった。獄中で少年は奪われてきた朝鮮人としてのアイデンティティをどのように回復したのか。今なおヘイトスピーチとして噴出する日本の差別状況は変わらない。小松川事件を中心に1965年日韓条約締結後から現在まで、歴史の闇に葬られてきた原爆被爆者、従軍慰安婦問題など、根底的な課題を共に考えたいと思います。(朴壽南)

1部 映画:「アリランのうた‐オキナワからの証言」(100分)
2部 トーク:光復70年から取り残された課題
-小松川事件の根底的な課題と今-
講 師:朴壽南(ドキュメンタリー映画監督・作家)
小松川事件・死刑囚李珍宇の減刑運動に携わり、死刑執行まで獄中書簡・面会を続ける。70年代より広島・長崎のコリアン原爆被爆者、沖縄戦に強制連行された軍属・慰安婦の実態調査と記録を開始。ドキュメンタリー映画製作と上映運動、被害者の復権と戦後補償運動に取り組む。現在新作映画を制作中。
主な著書『罪と死と愛と』(1963三一書房)『朝鮮・ヒロシマ・半日本人―わたしの旅の記録』(1973三省堂)他。主な監督作品『もうひとつのヒロシマ―アリランのうた』(1986)『ぬちがふぅ(命果報)』(2012)他。
  • 第88回
  • 2015/10/3
  • 李洋秀「韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議」世話人
  • 日韓会談で文化財問題はどう扱われたか
1965年の日韓会談での文化財協定の詳細、2つの国際条約1970年「文化財不法輸出入等禁止条約(ユネスコ条約)」、1995年「盗難及び不法輸出された文化財に関するユニドロワ協約」、昨年締結された文化財に関する米韓覚書の内容を紹介する。また、文化財をめぐる日韓会談の流れ、隠蔽された重要文化財、重要美術品の韓国関係一覧表、1965年2月に返還を約束しながらも反故になった文化財の目録を提示する。最後に、検証もされない文化財協定における「勧奨」とその後の流れ、文化財返還の世界的潮流と今後の課題を示したい。(李洋秀)

講 師:李洋秀(「韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議」世話人)
1951年市役所に勤務していた朝鮮人父と日本人母との間に愛知県豊橋市で生まれた在日韓国人2世。1984年千葉の弁護士たちと『千葉県在日朝鮮人の人権を守る会』結成、指紋拒否等「外登法」反対闘争を始める。1998年から韓国KBSテレビの日本側コーディネーターを務め、『歴史スペシャル』等200本以上の番組制作に関与。2005年『日韓会談文書/全面公開を求める会』に参加、以後事務局次長。2010年『韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議』を結成、世話人を務めている。
  • 第89回
  • 2015/11/7
  • 慎蒼宇(法政大学社会学部准教授)
  • 侵略と植民地支配責任から見た安倍談話
征韓論の昂揚から日清・日露戦争を経て形成された近代日本の大韓認識は朝鮮植民地支配化へと、そして関東大震災時の大虐殺として現れた。朝鮮人大虐殺の真相は究明されることなく、朝鮮人への偏見と差別観はそのまま残され皇民化政策・朝鮮民族抹殺政策が続く。戦後日本の民主化の中で朝鮮人への差別認識は克服されることなく、外国人登録令、民族教育弾圧、北への追放事業、就職差別、今日のヘイト・スピーチへと形を変えてがん細胞のように蘇ってくる。戦後70年を迎え、植民地支配責任を問う視点から150年にわたる日本の対韓認識と戦後民主主義を考える。(姜徳相)

講 師:愼蒼宇(法政大学社会学部准教授)
1970年東京都生まれ。都留文科大学非常勤講師を経て、法政大学社会学部准教授。専門は近代朝鮮史。著書に『植民地朝鮮の警察と民衆世界-「近代」と伝統をめぐる政治文化-』(有志舎、2008年)、論文として「韓国軍人の抗日蜂起と「韓国併合」」(『思想』2010年1月号)など。
※姜徳相先生講演代講
  • 第90回
  • 2015/12/5
  • 大村益夫(早稲田大学名誉教授)
  • 尹東柱の詩をめぐって
詩人の詩を研究する場合、詩そのものを論ずるのが本筋であろうが、詩が成り立つ環境や経緯について、調査することもまた必要である。特に尹東柱や沈連洙(シム・ヨンス)のように生前発表した作品がごく少数で、大部分が未発表の原稿のまま残されている場合は、そうであろう。綿密な原稿調査を行った後でないと、本当の意味での詩集ができない。詩集本体がはっきりしないままに詩を論ずるのは、砂上の楼閣のように、議論が空転する恐れがあるからである。
まず尹東柱とわたしとの出会いについて簡単に話したのちに、尹東柱研究の外堀を埋める作業を、尹東柱の親・きょうだい、尹東柱と沈連洙、尹東柱自筆原稿と各種版本という3つの観点にしぼって話してみようと思う。(大村益夫)

講 師:大村益夫(早稲田大学名誉教授)
1933年生まれ。1957年早稲田大学卒。1962年東京都立大学人文科学研究科博士課程修了。1970年より同人とともに『朝鮮文学-紹介と研究』を創刊、74年終刊。1972年より早稲田大学教授。1985年から一年間、吉林省延辺大学に滞在。主要著書に『中国朝鮮族文学の歴史と展開』(緑蔭書房)、『朝鮮近代文学と日本』(緑蔭書房)、『愛する大陸よ-詩人金龍済研究」(大和書房)。主な翻訳書に林鍾国『親日文学論』(高麗書林)、金允植『傷痕と克服‐韓国の文学者と日本』(朝日新聞社)、『朝鮮短編小説選上・下』(岩波書店)他。
  • 第91回
  • 2016/2/6
  • 内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)
  • 戦後史の中の「和解」
    -置き去りにされた植民地支配の清算-
①日本国憲法と日本国民とは
②戦争裁判と植民地支配-東京裁判は何を裁き何を裁かなかったのか。なぜ、朝鮮人が「日本人」として裁かれたのか。
③サンフランシスコ平和条約と植民地支配
-なぜ、大韓民国は講和会議に参加できなかったのか。
④平和条約の11条で戦争裁判の判決を承認した日本-刑の執行を引き受けた日本政府。
⑤アジア侵略・植民地支配の清算-日韓条約と個人の請求権。「韓国併合条約」が「もはや無効」とは。
以上の内容について考えます。(内海愛子)

講 師:内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)
早稲田大学卒業。日本朝鮮研究所所員、インドネシア・パジャジャラン大学講師。帰国後、文化学院、恵泉女学園大学、早稲田大学などで教鞭。主な著書に『戦後補償から考える日本とアジア』(山川出版社)、『日本軍の捕虜政策』(青木書店)、『キムはなぜ裁かれたのか-朝鮮人BC級戦犯の軌跡』(朝日新聞出版)、『戦後責任アジアからのまなざしに応えて』(共著、岩波書店)、『朝鮮人BC級戦犯の記録』(岩波書店)他。
  • 第92回
  • 2016/3/5
  • 石山久男(子どもと教科書全国ネット21常任運営委員)
  • 育鵬社・自由社版教科書は子どもをどこへ導くのか
来年度から4年間中学校で使われる教科書の採択手続が終わり、侵略戦争や植民地支配を正当化しようとする育鵬社版教科書の採択部数の比率が4%から6%へと若干伸びた。この教科書は子どもたちに何を教えどこへ導こうとしているのか。そういう教科書の採択が増えたという結果をどうみたらよいのか。そもそもこのような教科書がつくられてきた背景はどういうところにあるのか。私たちはそれに対しどう対処すべきなのか、などの問題を考えてみたい。(石山久男)

講 師:石山久男(子どもと教科書全国ネット21常任運営委員)
東京都立大学大学院修士課程を修了後、神奈川県川崎市立高校、東京都立大学非常勤講師を経て、歴史教育者協議会委員長(2004~2008)。日本歴史学協会監事。著書に『近現代史と教科書問題』(新興出版社)『日の丸・君が代』(学習の友社)、『教科書検定』(岩波書店)他。
  • 第93回
  • 2016/4/2
  • 宋連玉(元大学教授)
  • 羅蕙錫(な・へそく)に見る
    韓国のジェンダー研究
羅蕙錫(ナ・ヘソク、1896-1948)は朝鮮における最初の近代「女流」画家として有名である。植民地期に東京女子美術学校に学び、留学生同人誌に寄稿する傍ら、3・1独立運動にも参加して獄中生活を体験する。その後のエリート男性との近代的な結婚生活は、画家としての活動も含めて、常に世間の注目を集めた。欧米への外遊中に夫以外の男性との恋愛がもとで、離婚することになるが、離婚後の彼女の奔放な発言は世間を驚かせるものだった。
韓国における羅蕙錫評価の変化から、韓国のフェミニズムの現住所を探ってみたい。(宋連玉)

講 師:宋連玉(元大学教授)
元青山学院大学経営学部教授。専門は朝鮮近現代史、ジェンダー史。在日朝鮮人女性の戦後史、韓国文化作品を通した日韓関係史など幅広く研究。
著書に『脱帝国フェミニズムを求めて-朝鮮女性と植民地主義』(有志舎 2009)、『軍隊と性暴力-朝鮮半島の20世紀』(編著・現代史料出版 2010)など多数。
  • 第94回
  • 2016/6/4
  • 磯貝治良(作家)
  • 〈在日〉文学の歴史と今、そしてゆくえ
戦後/解放後に日本語で書かれた〈在日〉文学は、有名、無名を問わず多くの作家、作品が山脈を築いてきました。少なくない受賞作を輩出して文学界に影響を与えてきました。その文学も〈在日〉社会の様変わりと並走して、変容してきました。では、いま〈在日〉文学は何処にいるか、そして何処に向かうのか?〈在日〉文学の歴史を概観し、現状を考え、行方を考えてみようと思います。(磯貝治良)

講 師:磯貝治良(NPО法人「三千里鐡道」副理事長)
1977年より在日朝鮮人作家を読む会を主宰、例会は現在443回。文芸誌『架橋』を編集・発行して現在32号。在日コリアンとの協働を主とした社会運動、大学非常勤講師、ボクシングトレーナーなどサイドワークも多彩に行なう。著書に評論『始源の光―在日朝鮮人文学論』(創樹社)、『戦後日本文学のなかの朝鮮韓国』(大和書房)、『〈在日〉文学論』『〈在日〉文学の変容と継承』(新幹社)。小説に長編『クロニクル二〇一五』(一葉社)、『在日疾風純情伝』(風琳堂)、中短編集『夢のゆくえ』(影書房)、『イルボネ チャンビョク―日本の壁』(風琳堂)など。ほかに編著『〈在日〉文学全集』全18巻(勉誠出版)。
  • 第95回
  • 2016/7/2
  • 山田朗(明治大学文学部教授)
  • <戦後71年、戦争を考える!> 企画1
    昭和天皇の戦争指導と戦争責任
2014年9月に、昭和天皇のオフィシャルな伝記である『昭和天皇実録』全60巻(宮内庁編纂)が公開されました。戦争中、昭和天皇はどのくらいの情報を得て、どのように戦争を指導していたのか、それは戦況にどのような影響をあたえたのか、天皇の権限行使にともないどのような戦争責任が生じるのか、『実録』によって明らかになったこと、そこで隠されたことをともに明らかにします。(山田朗)

講 師:山田朗(明治大学文学部教授)
1956年生まれ。専門は日本近現代史・日本軍事史・天皇制論。歴史教育者協議会委員長。明治大学平和教育登戸研究所資料館館長。主な著書に『大元帥・昭和天皇』(新日本出版社, 1994年)、『軍備拡張の近代史』(吉川弘文館, 1997年)、『昭和天皇の軍事思想と戦略』(校倉書房, 2002年)、『日本は過去とどう向き合ってきたか』(高文研、2013年)、『兵士たちの戦場』(岩波書店, 2015年)などがある。
  • 第96回
  • 2016/8/6
  • 石田勇治(東京大学教授)
  • <戦後71年、戦争を考える!> 企画2
    ヒトラーとナチ時代のドイツを考える
ここ数年、ヒトラーに関する書物の刊行が相次いでいます。それは日本に限った現象ではなく、当のドイツでもヒトラーとその時代は人びとの強い関心を惹きつけています。戦後七十年以上が経過して、今なぜヒトラーなのでしょうか。
三十歳までごく平凡な、とても成功するように見えなかった人物が、わずか十数年で首相となり、息をのむ速さで近代史上類例のない強力な独裁者となりました。どうしてそんなことが可能だったのでしょうか。本講義では、ヒトラーとその時代のドイツが、現代の私たちに提起する問題を考えてみたいと思います。(石田勇治)

講 師:石田勇治(東京大学教授)
1957年京都市生まれ。東京外国語大学卒業。ドイツ・マールブルク大学社会科学哲学部博士課程修了。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。専攻、ドイツ近現代史。著書に『過去の克服―ヒトラー後のドイツ』(白水社、復刻版)、『20世紀ドイツ史』(白水社)、『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社現代新書)、編著に『図説ドイツの歴史』(河出書房新社)、『ジェノサイドと現代世界』(勉誠出版)、資料集に『資料 ドイツ外交官の見た南京事件』(大月書店)、訳書に『戦後ドイツ史』(クレスマン著、未來社)などがある。
  • 第97回
  • 2016/9/10
  • 石純姫(苫小牧駒沢大学教授)
  • 近代期北海道における朝鮮人の移住と定住化の形成過程-アイヌ民族との関係と重層性
北海道におけるアイヌ民族と朝鮮人の繫がりについて歴史的背景をたどりながら、近代史の埋もれていた多くの事実を掘り起こし、多様で重層的な日本の諸相について考察する。また、その歴史的事実が地域の人々にどのように記憶され継承されてきたのか、国民国家の枠のなかで語られてきた歴史との狭間で、マイノリティはどのように表象されてきたのかについて検証する。
依然として複雑な言説を再生産し続ける歴史認識をめぐり、強固な排外的ナショナリズムも形成されつつある。新たに生まれ続ける多様性に満ちた文化の光と影に焦点をあて、その問題性を考察し、かつ多様性を豊かさへと繋げる可能性を探る。(石純姫)

講 師:石純姫(苫小牧駒澤大学教授)
東アジアにおける植民地研究。論文に「帝国と植民地における先住民と奴隷(強制的労務者)-東アジアと北・中南米における比較-」(『苫小牧駒澤大学紀要』第31号、2016)、「近代期朝鮮人の移住と定住化の形成過程とアイヌ民族-淡路・鳴門から日高への移住に関して」(『アジア太平洋レビュー』第12号、2015)、「アイヌ民族と朝鮮人をめぐる記憶と表象―日高地方を中心に」(『大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター年報』第9号、2012)、「北海道近代における朝鮮人の定住化とアイヌ民族」(『東アジア教育文化学会年報』第3号、2006)など多数。
  • 第98回
  • 2016/10/1
  • 水野直樹(京都大学名誉教授・立命館大学客員教授)
  • 在日朝鮮人と治安維持法
治安維持法によって在日朝鮮人が苛酷な弾圧を受けたことは、よく知られています。しかし、いかなる法解釈によって治安維持法が在日朝鮮人の運動に適用されたかに関しては、かならずしも明らかにされていません。また、治安維持法による弾圧全体の中で在日朝鮮人がどの程度の比重を占めていたかについても知られているわけではありません。日本敗戦後に釈放された思想犯を出迎えた人々の多くが朝鮮人でした。それがどのような背景によるものであったかを考えることにします。(水野直樹)

講 師:水野直樹(京都大学名誉教授・立命館大学客員教授)
1950年京都市生まれ。専門は朝鮮近代史、東アジア関係史。著書に『創氏改名』(岩波新書、2008)、共著に『在日朝鮮人-歴史と現在-』(岩波新書、2015)、『生活の中の植民地主義』(人文書院、2004)、『論集 朝鮮近現代史』(明石書店、1996)、『「アリランの歌」覚書』(岩波書店、1991)など多数。
  • 第99回
  • 2016/11/5
  •  師岡康子(弁護士)
  • ヘイトスピーチと人種差別撤廃法制度
近年ヘイトスピーチが激化しましたが、国内外での批判も高まり、2016年6月3日にはヘイトスピーチ解消法が施行されました。その経緯を検証した上、意義と効果、問題点、具体的な活用方法を検討します。また、解消法を出発点として今後の人種差別撤廃法制度の構築の展望についても論じます。(師岡康子)

講 師:師岡康子(弁護士)
大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員。1992 年東京弁護士会登録。2002 年から弁護士とし て人種・民族差別問題に取り組む。2007 年 9 月から米・ 英のロースクールに留学し、人種差別撤廃条約と各国の人種・民族差別撤廃法を学ぶ。著書に 『ヘイト・スピーチ とは何か』(岩波書店)、共著に『なぜ、いまヘイト・スピー チなのか』(三一書房)、『Q&A ヘイトスピーチ解消法』(現代人文社)など。
  • 第100回
  • 2016/12/3
  • 君塚仁彦、鄭在貞、久留島 浩
    宋連玉、朴 一
  • シンポジウム
    在日韓人歴史資料館のいま、そしてこれから
2005年開館当時から「在日を知る!日本を知る!歴史を知る!」のテーマのもとに毎月第1土曜日に開催している土曜セミナーは、今年12月で100回目を迎えます。
第100回セミナ―では、日本社会における在日韓人歴史資料館活動の意義を踏まえて在日の歴史にどのように向き合うか、日本と韓国の視点を交えて考えます。

基調講演:君塚仁彦(東京学芸大学教授、博物館学)
「日本社会における在日韓人歴史資料館の意義」
報 告
鄭在貞(ソウル市立大学教授)
韓国近現代史における「在日」の現在
久留島 浩(国立歴史民俗博物館館長)
博物館における歴史展示の可能性
朴 一(当館理事、大阪市立大学教授)
資料館展示の今後-歴史群像を作ってきた人々
総合討論 在日の歴史と向き合う
鄭在貞、久留島浩、君塚仁彦、朴 一
  • 第101回
  • 2017/7/29
  •  李成市(当館館長、早稲田大学教授)
  • 近代日本人のアジア観
    -津田左右吉の中国・朝鮮観を中心に―
この10年ほどマスメディアを中心に氾濫しているのは、異様なまでの中国・朝鮮に対する差別、蔑視観です。そこで、今日に至る近代日本のアジア認識は、いかなる時代状況の中で形成されたのか、そのようなアジア認識の構造的な特質を日本近代、とりわけ植民地主義との関わりの中で捉えてみたいと思います。
その考察対象として、日本思想史研究者にして中国思想、中国史、朝鮮史研究において多大な業績を残した津田左右吉の中国・朝鮮観を中心に検討したいと思います。津田の中国・朝鮮認識は現今の日本における中国・朝鮮観を検討する上で、その歴史的な由来や様態を捉える視座になりうるものと考えています。

講 師:李成市(在日韓人歴史資料館館長、早稲田大学教授)
1952年名古屋市生まれ。1982年早稲田大学大学院博士課程修了。博士(文学)。横浜国立大学教育学部助教授、早稲田大学文学部助教授を経て、現在、早稲田大学文学学術院教授、早稲田大学理事。早稲田大学朝鮮文化研究所所長、朝鮮史研究会会長、韓国木簡学会会長(韓国)。
専攻は朝鮮古代史、植民地朝鮮における史学史。著作に『東アジアの王権と交易』(青木書店、1997年)、『古代東アジアの民族と国家』(岩波書店、1998年)、『創られた古代』(三仁出版、2000年、ソウル)、『古代朝鮮の考古学と歴史』(共編著、雄山閣、2002年)、『植民地近代の視座』(共編著、岩波書店、2004年)、『木簡から古代がみえる』(共著、岩波書店、2010年)、『岩波講座 日本歴史』(共編著、全22巻、2015年)など多数。
  • 第102回
  • 2017/9/2
  • 廣瀬陽一(大阪府立大学研究員)
  • 金達寿の生涯と活動
    -文学と古代史を中心に―
金達寿(1920~1997)は、半世紀にわたり、日本社会と在日社会にまたがって、日本と朝鮮、日本人と朝鮮人との間に人間的な関係を構築すべく尽力した知識人です。1970年前後を境に前半を文学、後半を古代史という、全く異なる分野で活躍し、「在日朝鮮人文学」というジャンルの定着や、「渡来人」の語の普及に大きな役割を果たすなど、私たちに多くのものを残しました。没後20年となる今年、改めて彼の生涯と活動を振り返りたいと思います。

講 師:廣瀬陽一(大阪府立大学研究員)
1974年、兵庫県生まれ。2015年、大阪府立大学大学院博士課程修了。博士(人間科学)。専門は日本近現代文学・在日朝鮮人文学。転向を研究テーマに、日本の文学と取り組む過程で、金達寿の小説「朴達の裁判」に出会い、彼の研究を始める。著書に『金達寿とその時代』(クレイン、2016)、編著に『金達寿小説集』(講談社文芸文庫、2014)。
  • 第103回
  • 2017/10/7
  • 三ツ井 崇(東京大学准教授)
  • 植民地期朝鮮における言語支配とその諸相
植民地期朝鮮における日本の言語支配については、しばしば日本語の強制的普及のイメージで代表される。日本語強制の事実は否定しようもないが、一方で「言語問題」は多様であり、総督府の言語支配の実像は非常に複雑であった。本セミナーでは、総督府の言語政策の諸相と朝鮮社会との関係、現代社会にまで尾を引いている言語・民族問題などについて確認し、その複雑さすら植民地支配の性格について考えてみたい。

講 師:三ツ井 崇(東京大学准教授)
横浜国立大学卒業後、一橋大学社会学研究科修士・博士課程修了。専門は朝鮮近現代教育・文化史・言語社会論。ソウル大学客員研究員(2003年)、早稲田大学文学学術院客員助教授、同志社大学言語文化教育センター准教授を経て現職。著書に『朝鮮植民地支配と言語』(明石書店、2010)、『植民地朝鮮の言語支配構造』(韓国、ソミョン出版、2013)ほか多数。
  • 第104回
  • 2017/11/4
  • 寺島善一(明治大学名誉教授)
  • オリンピックは、人種差別(主義)をこえなければならない
オリンピックは、クーベルタンの発案になる「平和運動」である。国威発揚の場でもなく、金メダル争奪合戦の場でもない。オリンピック運動の原点となる、オリンピック憲章には「友情、連帯そしてフェアプレーの精神に基づく相互理解が求められる。」とある。昨今の、スポーツの場面に見られる、人種差別的発言・行為は目に余るものがある。 2020年の東京五輪について、会場・経費の問題ばかりがクローズアップされているが、オリンピック運動の「原点」である、スポーツにより相互理解、国際的友好連帯を促進するための方法・施策についてあまり語られていない。
真のオリンピック精神とは何か?を考えたい。2002年の日韓W杯サッカーがもたらした、日韓の友好促進を忘れてはならない。

講 師:寺島善一(明治大学名誉教授)
専門はスポーツ政策、スポーツ思想。1968年東京教育大学体育学部を卒業後、名古屋学院大学助手を経て、1974年明治大学専任講師、1984年に同大学教授。1998年 St.Mary’s University(英国)客員教授。孫基禎生誕100周年シンポジウム実行委員会委員長(2012年)。著書・共著『リベラルアーツと大学の「自由化」』(明石書店、2005年)他
  • 第105回
  • 2017/12/2
  • 大島裕史(スポーツライター)
  • オリンピックと在日
来年は韓国・平昌で、2020年は東京でオリンピックが開催されます。在日は韓国がスポーツ強国となる土台作りに、非常に大きな役割を果たしてきました。プロレスの長州力、バレーボールの白井貴子、オリンピックで韓国代表としてメダルを獲得した在日の柔道家、マラソンの金哲彦など、韓国あるいは日本代表でオリンピックに出場した人、目指した人のエピソードや思いを交えながら、在日とオリンピックの歴史と現在について話します。

講 師:大島裕史(スポーツライター)
1961年東京都生まれ。明治大学卒業後出版社勤務を経て、1993年~1994年、ソウルの延世大学韓国語学堂に留学。日本に帰国後は文筆業に。『日韓キックオフ伝説』(実業之日本社、のちに集英社文庫)で1996年度ミズノスポーツライター賞受賞。その他の著書に、『2002年韓国への旅』(NHK出版)、『韓国野球の源流』(新幹社)、『魂の相克 在日スポーツ英雄列伝』(講談社)ほか多数。
  • 第106回
  • 2018/4/7
  • 吉野誠(東海大学名誉教授)
  • 明治維新と征韓論
近代の日本と朝鮮の関係は、明治初期における征韓論の高揚にはじまります。征韓論とはどのような思想なのか。それがなぜ幕末維新の時期に声高に叫ばれたのか。その後の朝鮮認識にいかなる影響を及ぼしたのか。吉田松陰の松下村塾が「世界遺産」に登録され、NHKの大河ドラマで「西郷どん」が放映されて、「明治150年」が喧伝されるなか、あらためて検討してみたいと思います。

講 師:吉野誠(東海大学名誉教授)
1948年、千葉県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科(東洋史学)博士課程修了。朝鮮近代史専攻。著書に『明治維新と征韓論』(2002、明石書店)、『東アジア史のなかの日本と朝鮮』(2004、明石書店)、論文に「福沢諭吉の朝鮮論」(『朝鮮史研究会論文集』26)、「与謝野鉄幹の朝鮮体験」(『東海大学紀要文学部』90)など。
  • 第107回
  • 2018/5/12
  • 庵逧由香(立命館大学教授)
  • 朝鮮総動員体制はどうつくられていったのか
戦時下の朝鮮半島では、数年の間に大規模なヒト(兵力、労働力)、モノ(米、綿布、資源)が動員され、「自発的」協力を強制するココロの動員(皇民化政策)が行われました。それを可能にしたのが、「朝鮮総動員体制」でした。この戦時体制は戦時期に突然つくられたのではなく、日本の総動員体制の一環として、すでに1917年から企画・準備されていました。このような朝鮮総動員体制の構築過程と、根こそぎ動員を可能にした構造についてお話します。

講 師:庵逧由香(立命館大学教授)
津田塾大学修士課程修了、高麗大学校史学科大学院文学博士。専門は朝鮮近現代史、国際関係史。著書に『植民主義、戦争、軍「慰安婦」』(共著、韓国語、図書出版ソニン、2017)、『地域社会から見る帝国日本と植民地』(共著、思文閣出版、2016)、『植民地書記の朝鮮農業』(翻訳書、明石書店、2016年)他多数。
  • 第108回
  • 2018/6/2
  • 小野容照(九州大学大学院准教授)
  • 在日朝鮮人留学生の民族運動
来年100周年を迎える1919年の3・1独立運動は、植民地期朝鮮で最大規模の独立運動と評価されています。その直前に、日本に留学していた朝鮮人学生が発表した2・8独立宣言は、朝鮮内の民族運動家に大きな刺激を与え、これが3・1運動の勃発を促しました。
2・8独立宣言にかぎらず、在日朝鮮人留学生の民族運動は、朝鮮半島の文化や思想など様々な面において重要な役割を果たしました。朝鮮人留学生たちが日本で何を考え、どのような活動をしていたのか、検討したいと思います。

講 師:小野容照(九州大学大学院人文科学研究院准教授)
京都大学大学院文学研究科(現代史学)博士課程修了、京都大学人文科学研究所助教を経て現職。専門は朝鮮近代史。著書に『帝国日本と朝鮮野球』(中央公論新社、2017年)、『朝鮮独立運動と東アジア1910-1925』(思文閣出版、2013年)、論文に「第一次世界大戦の勃発と朝鮮独立運動」(『東アジア近代史』18、2015年)、「第一次世界大戦の終結と朝鮮独立運動」(『人文学報』110、2017年)など。
  • 第109回
  • 2018/7/7
  • 権容奭(一橋大学大学院法学研究科准教授)
  • 韓国の民主化運動と「キャンドル革命」
    -촛불(キャンドル)」の歴史的意義-
韓国(朝鮮半島)は時に世界をあっと驚かせることをします。2016年秋に始まり、朴槿恵大統領の弾劾と政権交代を勝ち取った「キャンドル革命」もその一つでしょう。この若い世代を中心とした新しい形の「キャンドル革命」について、韓国民主化運動の歴史を振り返りながら、その起源・過程・特徴・歴史的意義について話します。特に、「オルタナティブ言論」や文化・芸能界の果たした役割を紹介しながら、日本社会への示唆についても考えたいと思います。

講 師:権容奭(一橋大学大学院法学研究科准教授)
1970年ソウル生まれ。幼少期より日韓を行き来し、1994 年一橋大学法学部卒業。同大学大学院で博士号を取得し、法学研究科専任講師を経て、2008年より現職。専門は日本外交史、日韓関係史、東アジア国際関係史。著書に『「韓流」と「日流」―文化から読み解く日韓新時代』(NHK出版、2010)、『岸政権期の「アジア外交」:「対米自主」と「アジア主義」の逆説』(国際書院、2008)、訳書に李徳一著・権容奭訳『イ・サンの夢見た世界―正祖の政治と哲学 上・下』(キネマ旬報社,2011)、監訳書にチェ・ギュソク著、権容奭監訳・解説『沸点-ソウル・オン・ザ・ストリートー』(ころから、2016)など。
  • 第110回
  • 2018/8/4
  • 木村健二(下関市立大学名誉教授・ 大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員教授)
  • 在朝日本人の1945年
植民地下の朝鮮に70万人を超す日本人が住んでいたが、その人数や職業的特徴をまずおさえたうえで、日中戦争以降も増加する日本人の、職業上・営業上の地位を示し、それが敗戦によって一挙に崩壊し、引揚げを余儀なくされる過程、そして引揚げ後の生活の再建に関し、同時期の在日朝鮮人の置かれた状況と対比的に検討する。

講 師:木村健二(下関市立大学名誉教授・大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員教授)
1950年愛媛県に生まれ。早稲田大学大学院博士後期課程満期退学、東京農工大学、下関市立大学教授を経て、現職。専門は近代日朝経済関係史、近代日本移民史。日本移民学会会長、日本植民地研究会代表理事を歴任。主な著作に、単著『在朝日本人の社会史』(未来社、1989年)、『一九三九年の在日朝鮮人観』(ゆまに書房、2017年)、共著『近代植民地都市 釜山』(櫻井書店、2007年)、共編著『日本帝国勢力圏の東アジア都市経済』(慶應義塾大学出版会、2013年)、『日本帝国崩壊期「引揚げ」の比較研究』(日本経済評論社、2016年)など。
  • 第111回
  • 2018/9/1
  • 渡辺延志(ジャーナリスト)
  • 関東大震災-その時代と社会
1923(大正12)年9月1日に発生した関東大震災は関東地方の広い範囲に甚大な被害をもたらした。その混乱の中で朝鮮人や中国人が虐殺された。惨劇はどのようにして始まり、なぜ広い地域に拡大したのだろう。そしてその実態がわかりにくいまま今日に至り、いまだ論争の的なのはなぜなのだろう。そうした謎に迫る新たな資料や証言が 、近年になり発見・確認されている。従来とは異なる視点からの研究もまとまっている。そうした新たな手がかりをもとに、事件の背景となった当時の社会状況や国際関係、さらにこの事件がどのように語られてきたのかなどを考える。

講 師:渡辺延志(ジャーナリスト)
独自に歴史資料の発掘、解読に取り組み、著書に『虚妄の三国同盟-発掘・日米開戦前夜外交秘史』(岩波書店、2013年)、「GHQ特命捜査ファイル・軍事機密費」(岩波書店、2018年)がある。論文に「新聞記者から見る歴史像の現在」(『歴史評論』2011 年2月号)、「731部隊-埋もれていた細菌戦の研究報告」(『世界』2012年5月号)など。1955年、福島県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
  • 第112回
  • 2018/10/6
  • 太田修(同志社大学教員)
  • 自らの文化を創りだす-梁民基とマダン劇運動
1981年、梁民基・久保覚編訳『仮面劇とマダン劇』(晶文社)が出版され、韓国の民衆文化運動のひとつ「マダン(마당)劇」が日本に紹介された。編訳者の梁民基(ヤン・ミンギ)はその後、大阪、京都を中心に「マダン劇運動」「マダン運動」を主導することになる。在日朝鮮人二世・梁民基の思想と実践を跡づけ、「マダン劇運動」「マダン運動」において見出された「自らの文化を創り出す」ということについて考えてみたい。

講 師:太田修(同志社大学教員)
1963年、兵庫県生まれ。韓国高麗大学校史学科博士課程修了。佛教大学文学部教員を経て、現職。専門は朝鮮近現代史。著書に『〔新装新版〕日韓交渉-請求権問題の研究』(クレイン、2015)、『朝鮮近現代史を歩くー京都からソウルへ』(思文閣出版、2009)、『동아시아 냉전의 문화(東アジア冷戦の文化)』(編著、ソミョン出版、2017)、『五〇年目の日韓つながり直し』(共著、社会評論社、2017)などがある。
  • 第113回
  • 2018/11/10
  • 李成市(当館館長、早稲田大学)
  • 三韓征伐-古代朝鮮支配「言説」の消長
8世紀初めに『古事記』や『日本書紀』が編纂されて以来、日本の支配層のみならず多くの人々によって、遠い過去に神功皇后が三韓(古代朝鮮半島)を征伐したと信じてきました。明治政府も韓国併合を、古代の三韓征伐と重ね合わせてプロパガンダに努めたため、三韓征伐は国民的な常識となりました。そのような言説が、どのように古代から語り継がれ、近代に国民的常識となりながらも、1970年代に至って歴史学上の問題としても国民の常識としても覆されていく過程について論じてみたいと思います。

講 師:李成市(在日韓人歴史資料館館長、早稲田大学教授)
1952年名古屋市生まれ。1982年早稲田大学大学院博士課程修了。博士(文学)。横浜国立大学教育学部助教授、早稲田大学文学部助教授を経て、現在、早稲田大学文学学術院教授、早稲田大学理事。早稲田大学朝鮮文化研究所所長、朝鮮史研究会会長、韓国木簡学会会長(韓国)。
専攻は朝鮮古代史、植民地朝鮮における史学史。著作に『東アジアの王権と交易』(青木書店、1997年)、『古代東アジアの民族と国家』(岩波書店、1998年)、『創られた古代』(三仁出版、2000年、ソウル)、『古代朝鮮の考古学と歴史』(共編著、雄山閣、2002年)、『植民地近代の視座』(共編著、岩波書店、2004年)、『木簡から古代がみえる』(共著、岩波書店、2010年)、『岩波講座 日本歴史』(共編著、全22巻、2015年)など多数。
  • 第114回
  • 2018/12/8
  • 大門正克(横浜国立大学教授)
  • 聞き書きのなかの在日朝鮮人 -1960・70年代の朴慶植、むくげの会、古庄ゆき子らを中心にして-
戦前以来の系譜のある聞き書きにおいて、戦後の大きな特徴は、文字を残すことが少ない人びとからの聞き書きが意識的にあらわれたことです。1960・70年代において、朴慶植は強制連行の調査のなかで在日朝鮮人から聞き書きを行い、むくげの会や古庄ゆき子は、在日朝鮮人の女性から聞き書きを行いました。語る、聞く、書くという作業のなかから浮き彫りになる在日朝鮮人の姿を追います。

講 師:大門正克(横浜国立大学教授)
1953年千葉県生まれ。1982年、一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。1996年一橋大学博士(経済学)。一橋大学助手、大月短期大学助教授、都留文科大学教授を経て、横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授。専攻は日本近現代経済史・農村社会史。歴史学研究会で編集長などを歴任。著書に『語る歴史、聞く歴史―オーラル・ヒストリーの現場から』(岩波新書、2017)、『Jr.日本の歴史7 国際社会と日本』(小学館、2011)、『日本の歴史15 一九三〇年代から一九五五年 戦争と戦後を生きる』(小学館、2009)、『歴史への問い/現在への問い』(校倉書房、2008)、『民衆の教育経験―農村と都市の子ども』(青木書店、2000)、『近代日本と農村社会―農民世界の変容と国家』(日本経済評論社、1994)など。
  • 第115回
  • 2019/3/9
  • 田村光彰(元北陸大学教授)
  • 尹奉吉とゲオルク・エルザー
    ~抗日独立運動と反ナチ抵抗~
治安維持法下の尹奉吉(ユン・ボンギル)、全権委任法下のドイツのエルザー。2人を通して日独の占領・植民地支配への戦後反省を取り上げます。ドイツの州憲法の1つにある「公権力への抵抗は権利のみならず義務」に着目します。
金沢には、尹奉吉の墓があり、日韓の、歴史認識を共有する市民運動も取り上げたいと思います。負の歴史を忘れさせたい人々の声が大きい今日、「人間の権力に対する戦いは、記憶の忘却に対する戦い」(クンデラ)です。

講 師:田村光彰(元北陸大学教授)
1946年生まれ。尹奉吉義士共の会会長。
著書に『統一ドイツの苦悩:外国人襲撃と共生のはざまで』(技術と人間、1993年)、『現代ドイツの社会・文化を知るための48章』(共著・明石書店、2003年)、『ナチス・ドイツの強制労働と戦後処理』(社会評論社、2006年)等。訳書に『ラディカル・エコロジー』(共訳・同、1994年)、『意識はフェミニズム、行動は地域』(現代書館、1991年)等。
  • 第116回
  • 2019/4/6
  • 第1部 : 金富子(東京外国語大学教授)
    第2部 : 金 栄(ルポライター)
  • 植民地遊廓から日本軍慰安所へ
    第1部 : 植民地遊廓の形成と日本の軍隊
    ~「京城」(ソウル)を中心に~
    第2部 : 北部朝鮮の植民地軍事都市の遊廓と慰安所
    ~慶興慰安所を中心に~
◇ 第1報告
近代日本による朝鮮侵略のなか、日本の公娼制が日本人居留地に移植された。前近代の朝鮮王朝政府は性売買を禁止したため、徳川幕府が公認する遊廓のような公娼制はなかった。日清・日露戦争をきっかけに日本軍が朝鮮に駐屯・常駐化し、占領地遊廓へと展開した。植民地期に朝鮮人も巻き込んで、法制度的に植民地遊廓になった。今回は日本の軍隊の動向に注目しつつ、「京城」(ソウル)での日本式遊廓の形成と展開を追う。

◇ 第2報告
植民地朝鮮に移植され日露戦争後から本格的に展開した日本式公娼制度は、当初から軍隊のための慰安所的性格をもっていた。その後も軍隊が駐屯した植民地軍事都市においては遊廓の形をとりながら慰安所的役割も果たし続け、戦争末期にはほとんど慰安所化していた。特に中ソ国境近くでは軍だけのための専用慰安所が設置されていた。当日は、昨年確認されたばかりの慶興慰安所を中心に「平時」朝鮮に設置された慰安所について述べる。

◇ 第1報告 植民地遊廓の形成と日本の軍隊 ~「京城」(ソウル)を中心に~(14時~)
講 師:金富子(東京外国語大学教授)
植民地朝鮮ジェンダー史・ジェンダー論。東京外国語大学教授。単著に『植民地期朝鮮の教育とジェンダー』(世織書房)、共著『植民地遊廓:日本の軍隊と朝鮮半島』(吉川弘文館)、共編著『「慰安婦」問題と未来への責任』(大月書店)、『Q&A朝鮮人「慰安婦」と植民地支配責任』(御茶の水書房)など。

◇ 第2報告 北部朝鮮の植民地軍事都市の遊廓と慰安所~慶興慰安所を中心に(15時~ )
講 師:金 栄(ルポライター)
在日朝鮮女性史研究と、近年は主に朝鮮民主主義人民共和国の現地調査をとおして日本軍と「慰安婦」制度及び植民地公娼制度の関係について研究。共著に『海を渡った朝鮮人海女』(新宿書房)、『軍隊と性暴力―朝鮮半島の20世紀』(現代史料出版)、『植民地遊郭―日本の軍隊と朝鮮半島』(吉川弘文館)など。
◇ 全体質疑応答 16時~16時30分
  • 第117回
  • 2019/5/11
  • 中塚明(奈良女子大学名誉教授)
  • 優越感・差別感は歴史の無知から
    ~近代日本と韓国・朝鮮-その歴史から考える~
未来を生きるには歴史を顧みることが必要だ――とは、日本でも世界でも多くの人たちが言ってきたことです。
しかし、いまの日本では、日本政府をはじめマスコミもふくめて、日本人は韓国や北朝鮮はもとより中国などの国々から、「歴史」といわれると身構えてしまう、「歴史恐怖症」のような症状があります。……(略)
一方で、韓国や北朝鮮、中国などについてのフェイクニュースは、特にネットの世界では横行しています。
日本が明治以後、朝鮮や中国に侵略した事実を正視したくない、そんなことをしても未来志向での相互友好に役立たない、という考え方もなかなか根強いものです。
日本の侵略のいやな話ではなく、植民地時代、日本と朝鮮の交流につとめた人や、朝鮮の民俗や美術を称揚した人たち、そんな人たちの交流の歴史をもっと明らかにすべきだ、という主張も強くあります。――こういう研究・交流ももちろん大切です。大いにすすめるとよいと思います。しかし、私が言いたいのは、明治以後の日本が朝鮮をはじめアジアの国ぐにに対しておこなった侵略戦争・植民地支配の事実、この事実に目を閉ざしては、「友好・交流」はあり得ないし、日本自身が平和で、市民の一人ひとりが世界に創造的に生きる、その未来図は描けないということです。……(略)
― 中塚明『日本人の明治観をただす』の本文より―

講 師:中塚 明(奈良女子大学名誉教授)
1929年、大阪府に生まれる。日本近代史、特に近代の日朝関係の歴史を主に研究。
主な著書に『日清戦争の研究』(青木書店)、『近代日本と朝鮮』(三省堂)、『蹇蹇録の世界』(みすず書房)、『歴史の偽造をただす』『歴史家の仕事』『これだけは知っておきたい日本と韓国・朝鮮の歴史』『現代日本の歴史認識』『司馬遼太郎の歴史館』『歴史家 山辺健太郎と現代』(以上、高文研)など。共著書に『NHKドラマ「坂の上の雲」の歴史認識を問う』『東学農民戦争と日本』(以上、高文研)がある。
  • 第118回
  • 2019/6/8
  • 伊藤智永(毎日新聞編集委員兼論説委員)
  • 植民地支配の忘れ方、思い出し方
「韓国併合は植民地支配ではなかった」という見解が根強い日本では、そもそも歴史認識の前提となる「植民地」「支配」「強制」といった基本概念について、国際常識と異なる議論が広く行き渡っている。文化交流は進んでも政治外交関係はこじれ続ける。過去へ窓を開く回路はあるのか。日本国内で支配した歴史を思い出す方法を実践する日本人たちの活動を通して考える。(伊藤智永)

講 師:伊藤智永(毎日新聞編集委員兼論説委員)
毎日新聞で長く政治記者を務め、経済部、外信部を経て、ジュネーブ特派員として国連人権人道外交、アラブの春、ギリシャ危機などを取材。コラム「時の在りか」(毎月第一土曜日)の連載4年目。
著書に、「「平成の天皇」論」(講談社現代新書・2019年)、「忘却された支配——日本のなかの植民地朝鮮」(岩波書店・2016年)、「靖国と千鳥ケ淵——A級戦犯の黒幕にされた男」(講談社+α文庫・2016年)、「奇をてらわず——陸軍省高級副官美山要蔵の昭和」(講談社・2009年)「靖国戦後秘史」(毎日新聞社・2007年、角川ソフィア文庫・2015年)がある。
  • 第119回
  • 2019/7/6
  • 伊藤亜人(東京大学名誉教授)
  • 北朝鮮社会をめぐる問題
1 北朝鮮をめぐる問題とは?
2 北朝鮮社会の実態とは:公式情報による社会主義体制
3 脱北者情報による非社会主義・非公式領域の実態
4 総活:社会主義体制の現状と将来、顕在化する問題とは?

講 師:伊藤亜人(東京大学名誉教授)
1943年東京生まれ。東京大学教養学部卒業、社会学研究科修士、教養学部および東洋文化研究所助手、教養学部助教授を経て綜合文化研究科教授(~2006年、名誉教授)。琉球大学法文学部教授(~2009年)、早稲田大学アジア研究機構上級研究員・教授(~2013年)。米国ハ-ヴァ-ド大学客員研究員(1977~79年)、英国ロンドン大学SOAS上級研究員(1996年)、韓国ソウル大学校招聘教授(2002年)。専門は文化人類学・民俗学、韓国研究。1971年より韓国の農村等で現地調査に従事。現在は北朝鮮民衆の生活実態について人類学的な調査研究に従事。第11回渋沢賞(1977年)、大韓民国玉冠文化勲章(2003年)、第9回樫山純三賞(2014年)。
主要著書:『アジア読本 韓国』(1996、河出書房)、『韓国珍島の民俗紀行』(1996、青丘文化社)、『韓国夢幻』(2006、新宿書房)、『文化人類学で読む 日本の民俗社会』(2007、有斐閣)、『珍島-韓国農村社会の民族誌』(2013、弘文堂)、『北朝鮮人民の生活-脱北者の手記から読み解く実相-』(2017、弘文堂)等。
  • 第120回
  • 2019/8/24
  • 解放74周年記念上映会
  • エイジアン・ブル
    浮島丸サコン
1945年8月24日、青森での厳しい労働から解放され、帰国の途にあった数千人の朝鮮人たちを乗せた輸送船、浮島丸が京都・舞鶴湾で爆沈した。戦後50年を経て、在日韓国・朝鮮人の大学教授・林は、教え子の姉妹とともに当時を知る人々の話を聞いていくうち、韓国・朝鮮人たちがおかれた過酷な環境を追体験する…。
平安建都1200年を市民が問い直す映画を作るべく、京都市民が始めた製作支援募金運動に支えられた作品。“戦後50年を問う”という視点が貫かれ、浮島丸事件を通して加害の痛みと反戦の重さが伝わる。(1995年、パンフレットより)

【映画情報】
企画:平安建都1200年映画をつくる会
制作:伊藤正昭
監督:堀川弘通
挿入曲:「清河への道」(新井英一)
キャスト:藤本喜久子、山辺有紀、益岡徹、隆大介、高川裕也、関根信行、岡本舞、有田哲平・植田晋也(海砂利水魚)他
  • 第121回
  • 2019/9/14
  • 田中史生(早稲田大学教授)
  • 帰化人・渡来人論争とその行方
「帰化人」をやめて「渡来人」を用いるべきとの見解が提起され、半世紀ほど経った。現在ではほとんどの教科書や概説書が渡来人を採用する。しかし日本古代史研究において、この論争は今も続く難しい問題である。近代の日本は古代の「帰化人」「渡来人」に何を見ようとしたのか。また古代史料からは「帰化人」と「渡来人」をどうとらえるべきなのか。未だ決着をみない帰化人・渡来人論争の問題点や課題について考えてみたい。

講 師:田中史生(早稲田大学 文学学術院教授)
早稲田大学卒業。國學院大學大学院文学研究科博士課程後期修了、博士(歴史学)。専門は古代日本の国際交流史。島根県教育庁文化財課(埋蔵文化財調査センター)主事、 関東学院大学経済学部教授を経て現職。
著書に『日本古代国家の民族支配と渡来人』(校倉書房1997)、『倭国と渡来人』(歴史文化ライブラリー2005)、『国際交易と古代日本』(吉川弘文館2012)、『国際交易の古代列島』(角川選書2016)、『越境の古代史』(角川ソフィア文庫2017)、『渡来人と帰化人』(角川選書2019)など。
  • 第122回
  • 2019/10/5
  • 長澤 秀(在日朝鮮人運動史研究会会員)
  • 著者に聞く『遺言-「樺太帰還在日韓国人会」会長、李羲八が伝えたいこと』とこれから
今の日本と韓国の間には底知れぬ深い海溝、真っ暗な闇が横たわっている。なぜ、こんなものがうまれたのか、どうすれば解決することができるのか?長らく「朝鮮人強制連行」の研究に従事してきた日本人による小さな、しかし、とても大切な決意と提言をします。当日、会場での質問、ご意見をお待ちします。

講 師:長澤秀(在日朝鮮人運動史研究会会員)
1951年福島県会津若松市生まれ。早稲田大学卒業、明治大学大学院修士課程修了、立教大学大学院博士後期課程退学。主な研究に『石炭統制会極秘文書・戦時下朝鮮人中国人連合軍俘虜強制連行資料集』『樺太庁警察部文書・戦時朝鮮人関係警察資料集』『戦後初期在日朝鮮人人口調査資料集』(以上、復刻版、緑陰書房)など。
  • 第123回
  • 2019/11/2
  • 菊池嘉晃 (現代韓国朝鮮学会会員、ジャーナリスト)
  • 在日100年史における北朝鮮帰国事業
今年12月で開始から60年となる北朝鮮帰国事業。在日コリアンの帰国者や日本人配偶者ら9万3340人が北朝鮮に渡った。在日100年史における大規模な人口移動(渡日と帰還)という視点から、事業が行われた要因を改めて解き明かす。筆者が発掘した旧ソ連機密文書などから浮き彫りになった北朝鮮側の意図や、日本、韓国、米国、ソ連など関係各国の思惑も分析。結果論からの安易な見方に警鐘を鳴らす。

講 師:菊池嘉晃(ジャーナリスト)
1965年東京都生まれ。早稲田大学卒業。博士(国際文化)[法政大学大学院]。87年読売新聞社入社、北朝鮮・韓国関連の取材などに携わる傍ら、94-95年に韓国の成均館大学大学院(史学科)に留学。北朝鮮帰国事業に関する論文(韓国語)で修士号。著書に『北朝鮮帰国事業「壮大な拉致」か「追放」か』(中公新書2009)。今年11月に、帰国事業に関する博士論文を単行本として明石書店より出版予定。論文に「北朝鮮帰国事業『前史』の再検討―在日コリアンの帰国運動と北朝鮮の戦略を中心に」(『現代韓国朝鮮研究』第8号、新書館2008)他。
  • 第124回
  • 2019/12/7
  • 朴正鎮(津田塾大学教授)
  • 在日朝鮮人「帰国事業」60周年、その真相を振り返る
在日朝鮮人「帰国事業」、そして「帰国運動」は何だったのか。60周年に際して、その歴史的な意味を「国際政治と人道主義」という観点から捉え直し、現在の意味を考える。

講 師:朴正鎮(津田塾大学教授)
1972年ソウル生まれ。2009年東京大学総合文化研究科博士課程修了、学術博士。専門は国際関係論、政治学。著書に『日朝冷戦構造の誕生1945-65』(平凡社、2012)、『帰国運動とは何だったのか―封印された日朝関係史』(共著、平凡社、2005)。最近の論考に「北朝鮮非核化の行方―空転する日韓の連携」『同代史研究』第11号(2018.12)他。
  • 第125回
  • 2020/2/1
  • 坂内宗男(調布ムルレの会運営委員)
  • 在日者に身を寄せて
     ~調布ムルレの会40年の歩みと私~
当会は1979年10月、関東地域では在日者(=韓国・朝鮮人)多住地域である東京・調布多摩川流域の在日大韓基督教会を事務所にムルレ(糸車)の会として発足した。人権を基点に“共に生きるために”ニュース『ムルレ』の発行と『市民講座』による啓発と交流が中核で、正しい歴史観に立ち、差別構造を見据え、同じ住民として和解と共生を目指す。差別はより潜在化、時に爆発する難しい社会にて、根の営みこそ大事と念じる。(坂内宗男)

講 師:坂内宗男(調布ムルレの会運営委員)
1934年福島県奥会津生まれ。法大でマルクス法学を学ぶ。1960年キリスト教無教会学生寮『登戸学寮』に入寮、初代寮長里見安吉・2代目寮長高橋三郎より「罪責」を知る。里見は朝鮮植民地時代当地で女学校教師を務め、高橋は朝鮮にて生を享けたもの。次いで、在日朝鮮人青年U氏と出会い、渡日した親の苦難、彼自身の這うような生き様に接し、就職が調布市庁にて福祉生活保護ケ-スワ-カ-の身で在日朝鮮人地域(部落)で働き差別構造を実感、人権→平和→天皇制にと目を向け今に至る。
著書に、『踏まれし足の痛みを分かちて~在日問題・隣国とのかかわりの中で~』2002、宗男・義子著、『地にも平和を』2008、共著に『今日の靖国問題』1980(以上キリスト教図書出版社刊)他共著有り。
  • 第126回
  • 2024/9/7
  • 後藤 周(関東大震災研究者)
    コメント : 渡辺延志(作家)
  • 1923年 横浜の朝鮮人虐殺
横浜市の南部丘陵地、「平楽の丘」は流言・虐殺の発生地です。9月1日の夜、朝鮮人暴動の流言が生まれ市南部一帯に広がります。やがてそれは「武器を手にせよ」「朝鮮人殺害さしつかえなし」という行動を煽る強力な流言に成長します。そして、翌2日流言・虐殺は全市に拡大したのです。「平楽の丘」で何があったのでしょうか。震災一日目の状況をたどり、横浜の虐殺の事実を追います。(後藤 周)

講 師:後藤 周(関東大震災研究者)
1948年生まれ。1972年から約40年にわたって横浜市の公立中学校教員を務め、在日朝鮮人教育・人権教育に取り組む。「信愛塾」、「ヨコハマ・ハギハッキョ」の活動に創設期から参加。現在は横浜の関東大震災の調査研究に努め、その報告書である「研究ノート」は150号を超える。また横浜市教委の「中学生用副読本」書換え・回収問題にも取り組む。著書に『それは丘の上から始まった-1923年 横浜の朝鮮人・中国人虐殺』(ころから出版、2023)。

コメンテーター:渡辺延志(作家)
1955年、福島県出身。2018年まで記者として朝日新聞に勤務し、主に歴史にかかわるニュースを扱い、青森市の三内丸山遺跡の出現、中国・西安における遣唐使の墓誌の発見などの報道を手がけた。著作に『歴史認識 日韓の溝』(ちくま新書、2021年/第27回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞)、『関東大震災「虐殺否定」の真相』(ちくま新書、2021年)、『日清・日露戦史の真実』(筑摩選書、2022年)『軍事機密費』(岩波書店、2018年)等。
  • 第127回
  • 2024/10/5
  • 韓 光勲(大阪公立大学大学院文学研究科博士後期課程・日本学術振興会特別研究員)
  • 「在日史学」研究の可能性をひらく-関東大震災朝鮮人虐殺を事例として
姜徳相は『時務の研究者』(三一書房、2021年)のなかで、在日コリアンの歴史学者たちの研究を「在日史学」と呼び、日本による朝鮮の植民地支配の歴史研究を主導してきた在日史学の重要性を説いた。私は、姜徳相の遺言ともいえるこの言葉に感銘を受け、研究の道に入ることを志した。本講演では、姜徳相が琴秉洞や朴慶植とともに切り開いた関東大震災朝鮮人虐殺研究の足跡をたどったうえで、1980年代以降の市民運動に与えた影響を解明したい。[文中敬称略](韓 光勲)

講 師:韓 光勲(大阪公立大学大学院文学研究科博士後期課程・日本学術振興会特別研究員)
1992年大阪市生まれ。在日コリアン3世。2019年、大阪大学大学院国際公共政策研究科博士前期課程修了。2019年4月から2022年7月まで毎日新聞記者。現在、大阪公立大学大学院文学研究科博士後期課程在籍。日本学術振興会特別研究員(DC1)。専門は社会学、朝鮮半島地域研究。2023年3月より1年間、高麗大学亜細亜問題研究院・訪問研究員。論著に「在日朝鮮人と歴史学―朴慶植生誕100年を記念して―」(『日本韓国研究』3号、2023)、「歴史家・姜徳相の生涯と学問―在日史学研究序説」(『在日朝鮮人史研究』53号、2023)、「【インタビュー】飛田雄一さん 歴史を心に刻み、石に刻む ―神戸から日本の植民地主義を問い、朝鮮人の被害を記憶する 」(『社会運動史研究』5号、2023)、「在日とヒップホップーJin Dogg「街風(feat. REAL-T)」試論 」(『抗路 』11号、2023)。2024年10月末、1年間の韓国滞在の経験をまとめた著書を出版予定(ワニブックス新書)。
  • 第128回
  • 2024/11/16
  • 朴 一(大阪市立大学名誉教授)
  • 力道山という生き方
力道山とは、何者だったのか。今回の講演では、昭和の大スターだった力道山のライフヒストリーを、格闘家と出自という二つの視点から振り返る。格闘家という視点からは、力道山の人生は、1)シルムの時代、2)大相撲の時代、3)プロレスラーの時代という3つの時代にわけて考察することができるが、今回の講演では、とくにこれまで振り返られることが少なかった力道山のシルム・大相撲時代の活躍について、また出自という視点からは、それぞれの時代における力道山の国籍とアイデンティティの葛藤について、それぞれ考察してみたい。(朴 一)

講 師: 朴 一(大阪市立大学名誉教授)
1956年兵庫県生まれの在日韓国人3世。1980年、同志社大学卒業、1988年、同大学大学院博士課程修了(商学博士)、立正大学専任講師を経て、1990年10月から2023年3月まで大阪市立大学経済学部に専任講師、助教授、教授、大学院教授として勤務。現在、大阪市立大学名誉教授、大阪大学大学院公共政策研究科招聘教授、摂南大学国際学部客員教授。著書に『在日という生き方』、『在日コリアンってなんでんねん』、『僕たちのヒーローはみんな在日だった』、『日本と韓国のホンネとタテマエ』、『在日マネー戦争』(すべて講談社)などがある。
  • 第129回
  • 2024/12/14
  • 田中 宏(一橋大学名誉教授)
  • 戦後日本の知識人と「朝鮮」植民地問題-南原繁・矢内原忠雄を素材に
外国人地方選挙権が韓国で実現したのは2005年。日本で「永住外国人地方選挙権付与法案」国会提出は1998年も、今だ実現せず。この違いは何処から?韓健洙教授「日本の植民地支配に抵抗する過程で形成されてしまった単一民族論と純血主義は克服されるべきである。…新しく再編される韓国社会または韓国人が民族と文化の多様性を通して新しい歴史を創って行くべきである…」。植民地支配のもう一方の日本では?と設問するも、なかなか答えが見えない…。(田中 宏)

講 師: 田中 宏(一橋大学名誉教授)
1937年生まれ、岡山出身。アジア学生文化協会勤務、愛知県立大学教授、一橋大学教授、龍谷大学特任教授を経て現在、一橋大学名誉教授。専門は日本アジア関係史、ポスト植民地問題、在日外国人問題、日本の戦後補償問題。著書に『日本のなかのアジア-留学生・在日朝鮮人・「難民」』(大和書房、1980年)、『虚妄の国際国家・日本』(風媒社、1990年)、『戦後60年を考える-戦後裁判・国籍差別・歴史認識』(創史社、2005年)、『在日外国人-法の壁、心の溝』(岩波書店、1991年/新版、1995年/第三版、2013年)、『「共生」を求めて-在日とともに歩んだ半世紀」』(中村一成編、解放出版社、2019年)、共著に『グロ-バル時代の日本社会と国籍』(明石書店、2007年)、『戦後責任』(岩波書店、2014年)など多数。